« case:本日の設例 | トップページ | comments:匿名の卑怯者は今日も元気 »

2006/01/30

news:ヒューザーが自治体を提訴

耐震偽装事件で、住民から瑕疵担保責任を追及される立場にある売主ヒューザーが、偽装検査を建築確認の際に見逃したという理由で、自治体に損害賠償を求める訴えを提起した。
ニフティのニュース

民法民訴の融合問題ネタになりそうな話である。

それにしても、かすかな違和感があったが、考えるにつけ、違和感が大きくなってくる。

まず、行政の建築確認というのは何のためにやっているのか? 建築業者のためでも、開発者のためでもないような気がする。建築確認をちゃんとやっていなかったからといって、建築主たるヒューザーが損害賠償を請求するのはお門違いのような気がするのだ。
第二に、自治体が国家賠償責任を負うとしても、それは本来不良品を最終的につかまされた住民に対して負うのが筋で、その前の売主ヒューザーが損害賠償請求権を取得するというのはおかしい。
ヒューザーとしては、住民に対して負う損害賠償義務が自治体の国家賠償に関する自らの損害だというのであろう。なるほど、住民にヒューザーが賠償すれば、その賠償債務を他の賠償義務者との間で分担するのは真っ当だ。しかしヒューザーはまだ住民に賠償しているわけではない。

賠償責任を負うことを前提に、それが損害だといって自治体に賠償請求するということになると、自治体からヒューザーを通じて賠償金が住民の元に行くような気がするので、結構な話に見えるかもしれない。しかしヒューザーに対する他の債権者は黙ってはいないだろうし、ヒューザーが破産するということになれば、管財人は自治体に対する賠償請求権により得た金員を全債権者に平等に分ける義務を負う。住民たちがその金に優先権を持つわけではないのだ。
住民達の賠償請求権をヒューザーが代わって行使している、いわば訴訟担当というのであれば、話は分かるし、提訴のコストを負担したヒューザーは偉いという話にもなるが、問題はある。そもそもそのような訴訟担当が、個々の住民の授権もなしに可能か(当事者適格があるのか)、授権があったって認められるのか(任意的訴訟担当の可否)、仮に認められたとしてもヒューザーが賠償金を受け取ってしまえば上と同じ問題が発生するので、住民が賠償金だけは直接取得する態勢を確保しなければならないが、それは可能か?

訴訟担当という構成は別として、住民達はヒューザーの提起した訴訟に参加するか、ヒューザーの自治体に対する損害賠償請求権を仮に差し押さえるか、その両方か、するべきであろう。

|

« case:本日の設例 | トップページ | comments:匿名の卑怯者は今日も元気 »

ニュース」カテゴリの記事

コメント

>建築主たるヒューザーが損害賠償を請求するのはお門違いのような気がするのだ。

う~ん。ヒューザーが自治体に対して損害賠償債権を取得できるかが焦点になってくると思うんですが、自らが違法行為をしておいて、そのつけを自治体にまわすというのでは、結局、権利濫用になるのではないでしょうか?

投稿: こう | 2006/01/30 21:11

「訴訟参加」は独立当事者参加ですよね(補助参加しても無意味)。
訴訟参加にしても損害賠償請求権の仮差押えにしても、住民側はかなりの手数料ないし担保提供が必要ですね(前者で請求額の0.2~1%程度、後者だと差押債権額の20~30%の担保。さらに両者とも弁護士費用が・・・)。住宅ローンを抱えた住民には結構辛いかも。

もちろん、そもそもヒューザーが損害賠償請求権を有するか(可能性があるとしたら設計会社と検査機関の共同不法行為ぐらいか?)かなりの疑問があるわけですが。

投稿:   | 2006/01/30 21:38

訴額が139億円だと、印紙代が約2000万円ですね...。

投稿: h | 2006/01/30 23:11

そうですね〜、勝ち目が無さそうな訴え提起をするには、少々大きすぎるツケですね。でも生活困窮の住民なら訴訟救助を申し立てるという手も。

しかしヒューザーは印紙代を払ったんですね。払っていないで訴状却下だったりしたら呆れるけど。

投稿: 町村 | 2006/01/31 00:36

ヒューザーも訴訟救助の申立てしていたりして(笑)

投稿: 通りすがり | 2006/01/31 05:45

 139億円のうち10円とか一部請求だったりするかもです(爆)。

投稿: 常連の一人 | 2006/01/31 09:26

 大きい事件ですから、弁護士の着手金も考えて欲しいですね。
 

投稿: 奥村徹(大阪弁護士会) | 2006/01/31 12:23

ヒューザーが司法支援センター(いやまだ法律扶助協会)に弁護士費用の立て替えを申請するとか?

コンティンジェント・フィーでだれか受けてみるとか・・。

投稿: 町村 | 2006/01/31 14:07

行政法的にも面白いような気がいたします

>民間の指定確認検査機関が建築確認を行った物件についても、最高裁判例により、自治体が責任を負うとしている。

この部分とかです。

ところで国賠の1条なんでしょうか
2条なんでしょうか。

投稿: 東馬 | 2006/01/31 15:39

2条だと設置管理の瑕疵のところで国の建築確認をあてはめて
無過失責任が問えそうな気がいたします。

民訴法的には
ヒューザーが住民に訴訟告知したら
上に上げられている論点以外にないでしょうか。

民法的には事前の損害賠償の可否も
あるかもしれません。ヒューザーは
住民に迷惑料という形で一部弁済している
共考えられますから。


町村教授がいわれるとおり多分に示唆に富む
法的問題が他にもありそうです。

とりあえずは不適法却下されないことを祈ります。

投稿: 東馬 | 2006/01/31 15:47

訂正

ヒューザーが住民に訴訟告知したら
上に上げられている論点以外にないでしょうか。

ヒューザーが住民に訴訟告知したら
有利な場合にのみ、あるいは不利な場合にも
何らかの効力が民訴法上生じるかです。

投稿: 東馬 | 2006/01/31 15:50

Niftyに続報がでていますね。

http://newsflash.nifty.com/news/ts/ts__fuji_320060131018.htm


これによりますと責任問えても過失相殺、つまり満額は難しいという
話のようです。

上でも申し上げました
2条で行く場合は過失相殺類推
ということになるのかもしれません

投稿: 東馬 | 2006/01/31 21:34

先に挙げた2条ですが「公の営造物」という
概念にあてはめるのが困難というか無理ですね。。。

となると1条のやはり「違法性」が争点になりそう。

投稿: 東馬 | 2006/01/31 22:14

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20060201k0000m040062000c.html

ヒューザーがあの民間検査機関に名誉毀損訴訟も提起したようです。

投稿: 東馬 | 2006/01/31 23:10

当事者(特にマンションやホテルの所有者の方々)に対しては申し訳ないのですが、この件が始まってから、演習の素材が次々と出てきています。期末試験でも、この事件を素材とした出題がなされたところもありますし。
破れかぶれで何でもやる人がいると、教室事例に近いケースが実際におこるという見本のようでもあります。

投稿: h | 2006/02/01 14:23

ちょっと、法律的なところで補足です。

住民がヒューザーに対する仮差押さえをすれば、補助参加でも意味があります(補助参加は印紙が要らない)。しかし、仮差押さえには担保が必要です。

債権者代位権を主張して独立当事者参加という手もありますが(無資力要件は満たされるでしょう)、当事者参加は印紙が必要なので負担がつらいところです。

しかも、仮に参加したとしても、破産決定がでれば、訴訟が管財人に引き継がれて、平等に弁済されるので、無意味です。

と言うわけで、みんなでお金を出し合って、破産申立をする。現に住民がやってますね。ベストだと思います。

投稿: Toshimitsu Dan | 2006/02/01 19:49

 心情的には訴状に貼った収入印紙2000万年に否認権を行使できるようにしたいですね。

投稿: それは? | 2006/02/01 21:21

なるほど、法律的には両者を追い求めることも可能だけれども実際上はかかる無理が生じるということですね。

>みんなでお金を出し合って、破産申立をする。現に住民がやってますね。ベストだと思います。

豊田商事方式ですね。

でも、ヒューザーにこれをそのまま用いて
うまくいく(ベスト)と言える策なのでしょうか。

というのは
豊田商事の時と違い、
他の一般債権者(とくに銀行)の中身が
豊田商事の場合とかなり異なっている気が
しませんか。大口債権者がいっぱいいそうな。そもそも、ヒューザークラスともなると
Too big to failなんじゃないかと考えていたのですが。ヒューザー破産でみんなハッピーになれるんでしょうか。

後不勉強ですが
なるべく総パイを大きくしないと、上述の点から雀の涙ほどの
お金しか得られないような気がするのです。


ところで既にいろいろ破産免責決定を受けた
企業がいますけれども
木村建設のころから破産申立をするといった
ことはできなかったんでしょうか。


直接の債権者じゃないと解されるから申立自体難しかったのかな。

>心情的には訴状に貼った収入印紙2000万年に否認権を行使できるようにしたいですね。

詐害行為取消じゃなくて??

投稿: 東馬 | 2006/02/01 21:51

すみません何故かわからないですが
連投になってしまいました。

投稿: 東馬 | 2006/02/03 01:53

後ろの方を消しときます。

投稿: 町村 | 2006/02/03 09:35

ついでに、
否認というのは破産法上の詐害行為取り消し権みたいなものですから。

投稿: 町村 | 2006/02/03 09:36

お手数をおかけします

いわゆる詐害否認ですね。

投稿: 東馬 | 2006/02/03 16:06

参考になります。面白いです♪どうも、ありがとうございます!

投稿: ももみ | 2010/02/04 20:51

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/31412/8419676

この記事へのトラックバック一覧です: news:ヒューザーが自治体を提訴:

« case:本日の設例 | トップページ | comments:匿名の卑怯者は今日も元気 »