Arret:背信的悪意者の最新事例
厳密に言うと、原審が背信的悪意者だとしたのを最高裁が破棄したものであるが、時効取得者との関係で背信的悪意が認められる必要条件が明らかになったという点で注目される。
(一部表現を修正)
要旨部分
「甲が時効取得した不動産について,その取得時効完成後に乙が当該不動産の譲渡を受けて所有権移転登記を了した場合において,乙が,当該不動産の譲渡を受けた時点において,甲が多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており,甲の登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するときは,乙は背信的悪意者に当たるというべきである。取得時効の成否については,その要件の充足の有無が容易に認識・判断することができないものであることにかんがみると,乙において,甲が取得時効の成立要件を充足していることをすべて具体的に認識していなくても,背信的悪意者と認められる場合があるというべきであるが,その場合であっても,少なくとも,乙が甲による多年にわたる占有継続の事実を認識している必要があると解すべきであるからである。」
(追記)
北星学園の竹田さんのブログでは、補足意見の部分に注目がなされている。
「原判決の上記のような継ぎはぎ的引用には,往々にして,矛盾した認定,論理的構成の中の一部要件の欠落,時系列的流れの中の一部期間の空白などを招くおそれが伴う。原判決は,そのおそれが顕在化した1事例である。この点において,継ぎはぎ的な引用はできるだけ避けるのが賢明である。」
この後に、パソコン使って判決書くんだから、もっと考えてわかりやすい判決にしろと、痛烈に叱責をしている。
(さらに追記)
上記の指摘の対象判決は、k-doctorさんのご指摘により別の判決におけるものでした。
詳しくはコメント欄をご覧ください。もう私は寝ます。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
- Wikipediaの記事を裁判に証拠として提出することの効果(2023.01.08)
- 民訴125条と新たな法定訴訟担当(2023.01.04)
- Book:弁護士のための史上最悪の離婚事件(2022.11.24)
- Book:痴漢を弁護する理由(2022.11.14)
コメント
町村先生、こんにちは、です。
上の泉裁判官の補足意見の件なのですが、それは背信的悪意者の件ではなく、借々10条の件についての最判についての補足意見ではないでしょうか。
http://courtdomino2.courts.go.jp/judge.nsf/dc6df38c7aabdcb149256a6a00167303/f25d71079f55b22a492570fb00187a36?OpenDocument
一応気になったので(私の勘違いならすみません)。
投稿: k-doctor | 2006/01/21 13:27
ほんとだ。
なんか混乱しちゃいました。
投稿: 町村 | 2006/01/21 19:05