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2006/01/25

America:匿名の卑怯者禁止法

CNET Japanに翻訳されたDeclan McCullagh氏の記事には、以下の条項に対する危惧が表明されている。
「電気通信または他の種類の通信を行うことができる任意の装置またはソフトウェアを利用する者が、インターネット経由で、自分の身元を明かすことなく、受信者を不快にしたり、罵倒したり、困らせたりする意図をもって発信を行った場合は、第18項の規定に基づく罰金刑、2年未満の懲役、またはその両方に処するものとする」

さて、この法律は一部改正法であるため、甚だしくわかりにくいが、以下の規定が新規の規定である。
SEC. 113. PREVENTING CYBERSTALKING.
(a) In General- Paragraph (1) of section 223(h) of the Communications Act of 1934 (47 U.S.C. 223(h)(1)) is amended--
 (1) in subparagraph (A), by striking `and' at the end;
 (2) in subparagraph (B), by striking the period at the end and inserting `; and'; and
 (3) by adding at the end the following new subparagraph:
  `(C) in the case of subparagraph (C) of subsection (a)(1), includes any device or software that can be used to originate telecommunications or other types of communications that are transmitted, in whole or in part, by the Internet (as such term is defined in section 1104 of the Internet Tax Freedom Act (47 U.S.C. 151 note)).'.
(b) Rule of Construction- This section and the amendment made by this section may not be construed to affect the meaning given the term `telecommunications device' in section 223(h)(1) of the Communications Act of 1934, as in effect before the date of the enactment of this section.

この条文が改正しているCommunications Act 1934は、上記の47 U.S.C.の223条(h)項(1)号だが、これは以下のような条文である。
(h) Definitions
For purposes of this section -
(1) The use of the term "telecommunications device" in this section -
(A) shall not impose new obligations on broadcasting station
licensees and cable operators covered by obscenity and
indecency provisions elsewhere in this chapter; and
(B) does not include an interactive computer service.

上記の改正条文により、インタラクティブコンピュータサービスを含まないとされたすぐ次に、インターネットによる通信に用いられるハードソフトが(a)項(1)号(C)小項に加えられる。

その規定は以下の通り。
(C) makes a telephone call or utilizes a telecommunications
device, whether or not conversation or communication ensues,
without disclosing his identity and with intent to annoy,
abuse, threaten, or harass any person at the called number or
who receives the communications;

ここにインターネットによる通信が加えられたわけだ。

表題が示すように、この改正法はドメスティックバイオレンスなど女性に対する暴力行為への総合的対策法である。全体的にはすばらしい内容なのだが、匿名での嫌がらせを禁止するという一見まっとうな規定がどのような副作用を引き起こすのか、今後目を離せないところだ。

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法律・裁判」カテゴリの記事

コメント

このエントリの日本語見ただけでもぱっと思ったことがあるのですが、引用元を見てもやっぱり書いてあったり。

>「一番大きな問題は不快という言葉の使い方だ。不快と感じるかどうかは人によって異なるからだ」とAmerican Civil Liberties Unionの法律顧問Marv Johnsonは言う。

やはり、合法と非合法の境の問題と言うのは誰でも思いつくところなんでしょうけれど、さてどうやって解決してくれるのか。そこが見ものですね。

投稿: サスケット | 2006/01/26 00:10

 「匿名の卑怯者」という表現にひっかかりを感じてしまいます。
 「匿名を利用した卑怯者」というような、誤解されにくい表現にして欲しいですね。
 匿名は、過去、いろんな意味で有意であったはずですし、、、。
 町村さんのBlogも有名だし、影響力を持っておられるのだから。
 勝手なお願いでした。

投稿: 弁護士五右衛門 | 2006/01/26 07:20

> 匿名での嫌がらせを禁止するという一見まっとうな規定がどのような副作用を引き起こすのか
47 U.S.C. 223 (a)は、以前から電話等については施行されていたのですが、annoy や harassというのは電話等とインターネットでは違うから、ということでしょうか。

投稿: tedie | 2006/01/26 07:32

いやまあ、これはおもしろいから使っているので、色々なインプリケーションを受け手が味わっていただければと思います。>匿名の卑怯者

電話は一対一の嫌がらせ等ですが、インターネットで情報発信ということになると、不特定の者に向けた表現が特定の人を不快にさせる事態を招き、逆に特定の者を不快にする意図の表現が不特定の者への表現と区別がつきません。
すると、広く網をかけるか、狭くして実効性を失う解釈にするか、いずれも問題になります。
 前者の解釈で適用し始めると、憲法問題となるでしょうね。

投稿: 町村 | 2006/01/26 08:24

米国のブログでの議論では、McCullaghは煽りすぎだ、「intent to annoy」となっているのだから、そんなに心配はいらない(意訳)という意見が多かったようです。
まあ、修正1条はright to annoyまで保障しているのだとかそんなことを言い出す人たちまでいるので、それはそれで面白いのですが。

投稿: 小倉秀夫 | 2006/01/26 08:55

 米国連邦最高裁は、「匿名で表現する自由」に対するこだわりがすごいので、憲法問題にはいずれにせよなるのでしょう。

投稿: 小倉秀夫 | 2006/01/26 08:57

>米国のブログでの議論では、McCullaghは煽りすぎだ、「intent to annoy」となっているのだから、そんなに心配はいらない(意訳)という意見が多かったようです。

レッシグ氏がデクラン氏について「政府がからむあらゆる提案に対してまずは軽蔑してしてみせるというたぐいの、若いとはいえ賢いリバタリアンだ」と評していたように(レッシグ著作「コード」所収「第十七章デクランのわかってないところ」より)、デクラン氏は基本的にリバタリアンであるように思いますし、それゆえに過剰に煽っているようなところも多分にあるように思いますね。日本もちょっとしたリバタリアンブームですから(自覚のない人たちも多いかも知れませんが)、デクラン氏のような煽りが根拠にされるようなところはあるかも知れません。

投稿: 福田 | 2006/01/26 10:42

 個人のプライバシーを暴いて住所氏名電話番号を晒し者にしたいという実名強要主義者にとっては、国境を越えて利用価値のある立法でしょう。

投稿: 通りすがり | 2006/01/26 20:34

http://japan.cnet.com/column/pers/story/0,2000050150,20095138,00.htm
にて訳出された条文を読む限りでは、現実に受信者が不快になったり、困ったりしたことは要件となっていないように読めます。
頭の堅い私には不思議な条文に感じます。
何はともあれ米国のダイナミズム、恐るべしです。

投稿: 佐藤 | 2006/01/26 21:33

Cnetを見ると、誰もが反対し難い物にこの項目を潜みこませたって感じですね
人の権利を制限しようとする卑怯者はどこにでも居るのですね

投稿: sakimi | 2006/01/26 22:28

 大丈夫です。コメンテータが煽りだろうがリバタリアンだろうが、米国は判例法の国で司法優位社会です。
 町村先生ご自身が米国の重要判例を紹介されています。

McINTYRE vs. OHIO ELECTIONS COMMISSION,
115 S. Ct. 1511, 1516 (1995)
(連邦最高裁1995.1.19判決)
匿名言論の自由が連邦憲法修正第1条により保障されるとした判決
http://homepage3.nifty.com/matimura/hanrei/cyberlaw/mcintyre.html

投稿: 通りすがり | 2006/01/26 23:26

蛇足:公民(政治経済)ネタ

 1803年、マーベリ対マディソン事件で、マーシャル裁判長の連邦最高裁は、合衆国連邦最高裁は違憲立法審査権を終審として有すると判決した。
 ちなみに1803年といえば、日本は江戸時代で欧州では英仏戦争が休戦;、北米ではアメリカ合衆国がフランスから1500万ドルでルイジアナを購入という時代。

投稿: 通りすがり | 2006/01/27 00:17

>インターネット経由で、自分の身元を明かすことなく、受信者を不快にしたり、罵倒したり、困らせたりする意図をもって発信を行った場合

 「小倉秀夫」という匿名ハンドルで自分の身元を明かすことなく、受信者を不快にする「卑怯者」「臆病者」という言葉で罵倒したり、匿名全員を困らせる意図を持って他人のブログのコメント欄投稿形式で発信を行った場合…は、どうなんでしょうか?

投稿: 通行人 | 2006/01/27 01:07

> 「小倉秀夫」という匿名ハンドルで~
その例ですと無論、小倉先生の名を騙り、悪意の元に投稿をした、本当の意味での「匿名の卑怯者」が対象となるでしょうね。

投稿: 一晃 | 2006/01/27 10:23

ともあれ、悪意で人を貶めることはオンラインでもオフラインでもやっちゃいけないことには疑いないですよ。匿名実名は関係ないけど、悪意かどうか、また貶める結果となっても正当性があるのかどうかは、微妙なケースが少なくないので、判断は常に難しいですがね。

投稿: 町村 | 2006/01/27 15:33

>悪意かどうか、また貶める結果となっても正当性があるのかどうかは、微妙なケースが少なくないので、判断は常に難しいですがね。

 そのおかげで「悪意の不在」という法廷もの映画ができたわけですから、拾う神もあります。映画ファンにとってですがw。

投稿: 常連の一人 | 2006/01/27 16:15

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