proc.civ.請求の放棄の例
新聞によれば、JALがANAに対して特許権侵害を理由に126億の賠償を求めた訴訟が、請求の放棄により終了する見込みである。
企業向け予約システムについて日航が特許権を取得し、同種システムを導入した全日空に特許侵害だとして提訴した。ところが、全日空は特許庁に日航の特許無効審判を申したて、特許庁は特許を無効とした。
それで、日航は訴訟の取り下げを申し入れたが、全日空側が応じなかったため、「請求放棄」を決めたということである。
さあ、民訴の勉強を始めたばかりの方々は、取り下げがなぜできなかったのかを考えよう。それと請求の放棄って何? 効力は取り下げとどこが違うのか? 訴え提起の手数料はどうなっちゃうのか?
民訴をある程度勉強した人は、このケースで請求の放棄をすることで日航にどのようなメリットがあるのかを考えてみよう。
いや、裁判所は大喜びだろう。判決を書かなくてもよくなったのだから。
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コメント
二点ほどわからないのです。
>訴え提起の手数料はどうなっちゃうのか?
請求の放棄の場合は訴訟費用裁判が後にあるわけですが、取下げの場合は手数料が戻ってきたりするのでしょうか
>請求の放棄をすることで日航にどのようなメリットがあるのか
ANAじゃなくてJALのメリットといわれるとわかりません。
投稿: 東馬 | 2005/12/14 09:17
取り下げでも放棄と同様に訴訟費用の裁判を申し立てることができるので、同じです。
放棄のメリットは、私も正直言ってよく分かりません。敗訴という結果を待つまでの間を省略する時間的メリット(例えば弁護士費用がタイムチャージのとき)とか、請求権の不存在について既判力が生じると、それを逆に援用できる場合(例えば所有権確認請求を放棄して自己に所有権がないことを確定させれば、所有者としての責任追及を受けなくなる)とかぐらいしか思いつかず、このケースのように金銭請求を結審間際に放棄する場合のメリットは思いつきません。
特許権侵害につきものの警告等がなされていれば、それに伴う業務妨害的な効果を全日空の側から損害賠償請求に使うということもあり得て、それとの関係で早期収拾を図ったという可能性もありますね。
投稿: 町村 | 2005/12/14 13:13
>弁護士費用がタイムチャージ
これはありえますね。
>業務妨害的な効果を全日空の側から損害賠償請求に使う
後の不法行為等を封じることを考えますと裁判上の和解という手段もあり得たはずですが、請求の放棄という手段を採ったのですよね。相手に一銭も払いたくないのか、あるいは
請求されることはないと踏んでいるのか
ただ日本の航空業界における現在の二者の地位という特殊性を考えることが必要なのかも知れません。
企業イメージの低下している側が、判決で敗訴するとなるとその損害は測り知れないような気がいたします。そして両者の一方の選択肢として和解は判決に準ずるほど採り得ない選択肢だったのかも知れません。
投稿: 東馬 | 2005/12/18 10:07