FD:三澤弁護士のお話
昨日は三澤弁護士をお迎えして、リーガルクリニックの教育利用についてスタッフセミナーを開催した。
色々と有益な、また実践者ならではの迫力あるお話が聞けた(いや、三澤先生の場合いつでも迫力はあるのだが)。
その中で妙に印象に残っているのが次の言葉。
リーガルクリニックの受講生数が予想よりも少ないことについて、よく司法試験の合格率が低いから余裕がなくなるといわれる。しかし、仮に合格率が80%となっても、人間は面倒なことをしなくてもよければしないのが普通なので、そう簡単にクリニック受講率が上昇するとは思えない、ということである。
制度を考えるとき、ついつい、理想に燃えていて、必要なことは何でもやり、知的好奇心に従って行動する人を想定しがちだが、人間はもともと怠惰な性向を持っていることを忘れてはいけない。
確かに、余裕がないためやりたくてもできない実務基礎科目、という側面はあるし、それが選択科目、はなはだしきは自由科目として卒業単位にもならない(さらにいえば取得単位の上限)という制度的欠陥があれば、余計に実務基礎科目をとれなくなる。
が、しかし、必要性・有益性・面白性が見えなければ、余裕があっても履修しようとはなかなかしない。
ではリーガルクリニックは必要がないか、有益ではないか、面白くないか、というと、必要で有益で面白いと思う。法実務がきらいな人は別だろうが、そう言う人は早めに法科大学院から転身すべきなのだ。
新司法試験という問題もあるが、これまた三澤先生のお話にあったが、リーガルクリニックのやることは新司法試験のような事実の固まりから法的関係を見いだして解決策を探る式の問題を解くのに直結する能力を鍛えるものだ。そりゃ短答式対策にはならないが、論文式の問題解決に必要な能力を高めるという点で、一見遠回りに見えるリーガルクリニック(広義)は受験勉強としても有益である。
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コメント
三澤先生は、学生時代から存じ上げていますが、当時から迫力のある方でした。
投稿: yjochi | 2005/12/08 08:28
土曜日は落合さんが来るという話をしたところ、早稲田人脈であることを教えてもらいました。
多彩な人材を輩出しているという点は、大規模校のいいところでうらやましい。
投稿: 町村 | 2005/12/08 08:48
クリニックについては、「要はやりよう」だと思うのですよ。実務修習のまねでは、文字通り「修習ごっこ」とか「弁護士ごっこ」とか揶揄されるとおりになってしまう。
同じ「生の事件に接する」のでも、法理論について、いちおうの知識がついていると「推定」(決して「みなし」ではない)される修習生と、そうでない法科大学院の学生とでは、やりかたは全く違うはずです。事件に触れつつも、意識して理論の世界と強く結びつけさせるような指導がいるのではないかと思います。
投稿: h | 2005/12/08 18:49
クリニックにも模擬裁判から見学、面接立ち会い、下調べ、報告書作成、起案下書き、接見同行くらいまでありえます。
その意義も、一年生ならモチベーション中心で、二年生、三年生となると理論の応用なり事実解明能力の訓練なりといった点が中心になるでしょう。
法科大学院生の能力は様々で、特に社会人キャリアを持つ学生には法的知識への結びつきを重点的に指導していく必要があるでしょうし、そうでない場合は生の事実の解明能力の方に重点をおく指導が必要でしょう。
いずれにしても、学習に役立つ機会とするのには、それなりに工夫が必要です。
ちなみに、三沢先生によれば、模擬裁判も研修所では大部分が傍聴人としてしか立ち会えないのに対して、國學院では全員が役割を持って参加できるので、研修所の模擬裁判よりも有益だとおっしゃっていました。
投稿: 町村 | 2005/12/09 13:14