jugement:建築瑕疵で施工業者、その代表取締役、設計監理の建築士に賠償を命じた事例
姉歯ケースとは事案が違うが、手抜き工事でひび割れなど生じた建物について、施工業者の瑕疵担保責任とその代表取締役に商法266条の3の責任が認められ、また設計監理をした一級建築士にも不法行為責任を認めた事例である。
瑕疵の判断について、以下のように判示しているところは注目である。
「建物について瑕疵があるか否かを判断するに当たっては,まず,当該建物の設計図書,契約図書及び確認図書(以下「設計図書等」という。)が当事者間の契約内容を画するものであることに加え,それらが行政の行う建築確認や許可等の判断資料となることからすると,特段の事情のない限り,当該建物が設計図書等のとおりに建築されている場合には瑕疵がないとし,そのとおりに建築されていない場合には瑕疵があるものと判断すべきである。また,法及び施行令,建設省(国土交通省)告示,JASS5(鉄筋コンクリート造建物の場合)等(以下これらを併せて「法令等」という。)は,建築上の最低基準を定め(法1条),それを具体化し,あるいは我が国の建築界の通説的基準を示すものである(JASS5も,時代とともに改正が重ねられてきた建築業界での通説的基準であると認められる(甲40)。)から,法令等の定めを満たしている場合には瑕疵がなく,これを満たさない場合には瑕疵があると判断すべきである。
これに対し,法令等が安全な建物が建築されることを目的として定められていることなどを根拠として,当該建物が事実上安全であれば瑕疵はないとすべきであるとして,事実上の安全性を瑕疵の判断基準とする考え方もある。しかし,建物の事実上の耐力を数値化することはできず,それを前提として将来当該建物に襲来する荷重を予測することもできないのであって,事実上の安全性の有無を的確かつ客観的に判定することは不可能である。したがって,事実上の安全性といった概念は,瑕疵の判断基準として合理的なものとはいえず,上記のような考え方を採用することはできない。」
建築士の責任に関する判断は、微妙なところもあるが、建築法規上の義務違反が施主に対する不法行為責任を基礎づけるというこの理屈が立つのなら、姉歯ケースでも参考となろう。
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