law:動産・債権譲渡登記制度の創設と法解釈への影響
昨日、動産・債権譲渡登記制度が施行された。
動産譲渡について登記をもって対抗要件とするなど、民法178条という基本的な条文に関わる大改革につながるわけだが、解釈論にも大きく影響する可能性がある。
特に集合動産担保の安全性が高まるとともに、従来占有改定が対抗要件となるかどうかについて議論されて判例も積み重なってきたところに影響するのではないか。
早い話、動産の二重譲渡で占有改定を二重に行うということが、登記制度を利用すればできなくなるわけだ。
そのような途が開かれているのに、敢えて占有改定で動産譲渡の対抗要件を備えた者は、二重譲受人に対して対抗できないと解釈しても良さそうである。
同法3条2項が一応従来の占有改定による対抗要件取得の場合と登記利用対抗要件取得の場合との調整規定となっているが、倒産した場合の調整は視野に入っておらず、従前と同じ解釈がされると考えられているのだろう。
しかし、もともと占有改定は公示性が乏しいため、倒産となった場合の一般債権者の期待を裏切る度合いが強い。このような登記をしない動産譲渡担保について、倒産手続内での対抗要件を認め、取り戻し権を行使させるという解釈は、今後見直されて然るべきである。
参考:動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律
3条2項
代理人によって占有されている動産の譲渡につき前項に規定する登記(以下「動産譲渡登記」という。)がされ、その譲受人として登記されている者が当該代理人に対して当該動産の引渡しを請求した場合において、当該代理人が本人に対して当該請求につき異議があれば相当の期間内にこれを述べるべき旨を遅滞なく催告し、本人がその期間内に異議を述べなかったときは、当該代理人は、その譲受人として登記されている者に当該動産を引き渡し、それによって本人に損害が生じたときであっても、その賠償の責任を負わない。
もう一つ、この法律は将来の債権で債務者が定まらないものについても譲渡登記が出来るようにしたが、この点も手続法的に注目だ。差押え可能財産の範囲に影響を与える可能性がある。
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コメント
理論的に大きな影響はないかもしれませんが、保証契約が要式行為(書面を必要とする)とさりげなく変わっていたことに、ちょっとびっくりしました。
昔だったら、こういうところを喧々囂々と議論していたのかなぁと思ったりして。
投稿: h | 2005/10/04 12:20