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2005/10/13

Arret:読売対デジタルアライアンス控訴審判決

知財高判平成17年10月6日
この判決については落合弁護士の的確な批評が分かりやすい。

1.新聞記事見出しに著作物性が認められるかどうかの一般論
「一般に,ニュース報道における記事見出しは,報道対象となる出来事等の内容を簡潔な表現で正確に読者に伝えるという性質から導かれる制約があるほか,使用し得る字数にもおのずと限界があることなどにも起因して,表現の選択の幅は広いとはいい難く,創作性を発揮する余地が比較的少ないことは否定し難いところであり,著作物性が肯定されることは必ずしも容易ではないものと考えられる。
 しかし,ニュース報道における記事見出しであるからといって,直ちにすべてが著作権法10条2項に該当して著作物性が否定されるものと即断すべきものではなく,その表現いかんでは,創作性を肯定し得る余地もないではないのであって,結局は,各記事見出しの表現を個別具体的に検討して,創作的表現であるといえるか否かを判断すべきものである。」
具体的には、YOLの見出しに著作物性が認められるものはないと認定した。

 #ちなみに、記事の複製権侵害も主張しているが、これには裏付けとなる具体的事実の主張がなく、再三の釈明にも関わらず具体的事実主張をしない。弁論主義の主張責任というのは釈明権行使があるし、有利な事情は何でも主張するから、実務上は意味がないという実務家から受けるが、今後は「読売新聞社の訴訟追行では抽象的に複製権侵害をいうだけで具体的な記事の複製の事実は釈明を受けてもしなかった」という例を使わせて頂く。

2. 不法行為が成立する理由、特に法的に保護された利益侵害が認められる具体的事情
「本件YOL見出しは,控訴人の多大の労力,費用をかけた報道機関としての一連の活動が結実したものといえること,著作権法による保護の下にあるとまでは認められないものの,相応の苦労・工夫により作成されたものであって,簡潔な表現により,それ自体から報道される事件等のニュースの概要について一応の理解ができるようになっていること,YOL見出しのみでも有料での取引対象とされるなど独立した価値を有するものとして扱われている実情があることなどに照らせば,YOL見出しは,法的保護に値する利益となり得るものというべきである。一方,前認定の事実によれば,被控訴人は,控訴人に無断で,営利の目的をもって,かつ,反復継続して,しかも,YOL見出しが作成されて間もないいわば情報の鮮度が高い時期に,YOL見出し及びYOL記事に依拠して,特段の労力を要することもなくこれらをデッドコピーないし実質的にデッドコピーしてLTリンク見出しを作成し,これらを自らのホームページ上のLT表示部分のみならず,2万サイト程度にも及ぶ設置登録ユーザのホームページ上のLT表示部分に表示させるなど,実質的にLTリンク見出しを配信しているものであって,このようなライントピックスサービスが控訴人のYOL見出しに関する業務と競合する面があることも否定できないものである。
 そうすると,被控訴人のライントピックスサービスとしての一連の行為は,社会的に許容される限度を越えたものであって,控訴人の法的保護に値する利益を違法に侵害したものとして不法行為を構成するものというべきである。」
要するに、一方で記事は多大の費用労力をかけて、それなりに工夫された表現を創り、有料取引の対象ともなっていること、他方その利用者は無断で営利的かつ反復継続して、情報の鮮度が高い時期に、デッドコピーすることで記事作成者と競合する業務を営んでいること、この双方の事情から、「法的保護に値する利益を違法に侵害した」と認められた。

3. 損害算定
「民訴法248条の趣旨に徴し,一応求められた上記損害額を参考に,前記認定の事実及び弁論の全趣旨を勘案し,被控訴人の侵害行為によって控訴人に生じた損害額を求めると,損害額は1か月につき1万円であると認めるのが相当である。」
 えいやっと決めたわけだ。
 著作権侵害ということであれば、著作権法114条で侵害者が受けた利益を損害額と推定できるが、そうできないことはいうまでもない。

ということで、印象としては随分昔にアメリカで問題となったフレームによるニュースサイトの表示を行い著作権侵害に問われた事例と類似する。あの事件ではリンクにすぎないか、フレーム内に表示することが複製権侵害になるのかという点が争われた。結局和解で終わり、法的見解は確定しないままだったのが、その後フレーム内に表示させるリンクはヤバイという点だけが一人歩きした。
今回の判決も、記事見出しの複製はヤバイという点だけが一人歩きするのではないかという危惧があり、読売の報道ぶりなどはそれを狙っているのではないかと思われる程でもある。
 # ロースクールの学生さんは、きちんと判決の射程を読み取ることができるように訓練されているはずだから、大丈夫だと思うが。

追加:
壇先生の見解
どちらが勝ったのか分からない、一万円で読売オンラインの記事見出しを使い放題とした判決とも読めるとのことです。

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投稿: bombercat | 2007/07/26 23:31

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