jugement:モデル大量引き抜きを不法行為と認めた事例
東京地判平成17年10月28日
朝日コムによれば、大手モデル事務所「クリエートジャパンエージェンシー」(東京)が、同社元取締役らの設立した新会社「フラッグスファイブ・プロモーション」にモデル72人を引き抜かれたとして、新会社や元取締役らに対して賠償を求めたケースで、東京地裁は1500万円の賠償を命じた。
不法行為だという。
記事によると、クリエートジャバンエージェンシー所属のモデル350人中72人が新会社に移籍したそうで、判決は「元取締役らは100人以上のモデルに電話をかけるなど新会社への移籍を勧誘し続けた」と認定し、「こうした勧誘は著しく社会的相当性を欠くと言わざるを得ず、不法行為と認めるのが相当だ」とした。
なかなか微妙な判断であろう。
ヘッドハンティング一般が違法というわけではもちろんなく、この事件では元取締役という委任関係にあった者であることやその地位にあったことを利用したこと、特定の会社所属のモデルに働きかけた数の多さなどが限度を超えていると評価されたのだろう。
一種の背信的悪意みたいな考え方かもしれない。
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コメント
そういえば、以前家に来ていた洗濯屋の外交さん(夫婦が経営者でその人は雇われ)が、夫婦のいじめに会い、そこを退社して新しい洗濯屋に勤めて、顧客ほぼ全員を鞍替えさせたことがあったのですが。
その人は前の洗濯屋に訴訟されて敗訴、確か300万円払うことになった、と言っておりました。
投稿: 中井亀之助 | 2005/10/29 21:07
この判例はホストクラブやメイド喫茶に適用がありますか?という質問を受けました。法律相談も時代や最新風俗を反映しています。
投稿: 通行中 | 2005/10/30 01:57
この判決には納得がいきません。
元取締役と元の勤務先との間でどのような雇用契約が結ばれていたのかわからないのですが、雇用契約に退職後に元の勤務先に所属するモデルを勧誘してはいけない期間が設けられていなかったのだとしたら、裁判所の判断は不適切であったと思われます。
☆昔、松田聖子がレコード会社を移籍した際にマスコミが聖子を叩いていたのを思い出しました。聖子はSONYのスタッフとの仕事の限界を感じて移籍したのではなかったかと想像していますが、マスコミとしては今までの恩を忘れてSONYのスタッフを見捨てたような煽り方をしていたのが印象に残っています。
投稿: koneko04 | 2005/10/30 05:52
顧客の名簿や所属モデルの名簿は、営業秘密に当たるんでしょうから、不正競争防止法で保護される可能性はあります。
不正取得行為とか不正開示行為とかが介在していればですが。
そうでない場合、委任関係にあったことを根拠に、委任関係終了後も委任者の秘密情報を開示ないし利用して委任者に損害を与えてはいけないというルールは、学説上は契約の余後効などといって認める見解があります。
しかしkoneko04さんの指摘通り、そのような効果を契約に定められてもいないのに認めるのはおかしいではないかという見解もあり得るでしょう。
逆に契約成立前に、成立交渉を誠実にする義務があるということは、あまり異論がないので、契約終了後の義務も認められる可能性はあるのでしょう。その辺はすばっと割り切れない部分を残しています。
投稿: 町村 | 2005/10/30 15:18