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2005/09/28

jugement:将来給付の訴えが一部却下された事例

事案自体も面白そうだが、民訴的には表題の部分が最も目を引く。
広島地判平成17年7月20日

不当解雇事例で、講師の地位確認を認容し、賃金も未払い分と将来分の支払を命じたが、その終期を本判決確定までとした。
その理由は以下のとおり。
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以上によれば,被告の原告に対する本件解雇は無効であるから,原告は被告大学E学部講師の地位にあることとなり,また,被告は,原告に対し,既に支払期日が経過した分の賃金を支払うべき義務があるとともに,原告が求めている将来の賃金請求についても,前記認定の諸事情からすると,本判決確定までの分については,原告において予め請求する利益があると認められる。しかし,判決確定後の賃金については特段の事情が認められない限り請求する利益があるとはいえないところ,本件において特段の事情は認められない。したがって,本判決確定後の賃金請求分については訴えの利益がないものとしてこれを却下する。
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しかしながら、普通、現在の支払義務を争っていることで将来の給付をあらかじめ求める利益を認めるのであるから、終期は定めないのが普通だ。
本判決確定後は任意に弁済される可能性が高く、あらかじめ請求する必要はなくなるという事情は伺われないのだが、この判決はそこを、特段の事情がないから確定後の賃金をあらかじめ請求する必要が認められないとしている。
確定の前後で決定的に違いが生じるという根拠はあるのか?

追記
コメント欄の御指摘に触発されて少し文献などを調べてみたが、条解民事訴訟法や注釈民事訴訟法の将来給付訴訟のところではちゃんと書かれていて、しかもこの取り扱いについて好意的であった。
上記の「終期は定めないのが普通だ」というのは間違いである。
ただし、疑問は疑問として留めておく。

確定までの給付しか認めないとなると、賃金を支払わない使用者に対して確定時点までの未払い分しか強制執行できないことになる。それ以後、なお就労を拒否する使用者に賃金を支払わせるには、改めて訴えを提起して未払い分の支払請求認容判決を得るしかない。もちろんその際に、解雇無効ないし従業員たる地位の確認には既判力が生じているので、そのことが前提となるのだが、起訴責任を被用者側が負うのは筋が違うように思われる。

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コメント

 はじめまして。
 解雇無効+賃金請求の場合に,判決確定以降の賃金請求を却下する事例は,少なくないように思います。
 理由は,「雇用契約上の地位が訴訟によって確定すれば使用者が賃金を払わない特段の事情は一般には認めがたいから,将来の賃金請求の必要性の限度は本判決確定に至るまでとするのが相当」だからだそうです(浦和地判平10・10・2判タ1008・145,同旨東京地判平3・12・24判時1408・124等)。
 そして,裁判例の中には,その「特段の事情」の有無のみについて言及して,請求を却下しているものも少なくありません(東京地判平4・3・30判時1421・129,東京地判平15・7・7労判862・78等)。
 本判決も,そのような裁判例の流れに沿ったものだと思います。

投稿: Hakuriku | 2005/09/28 22:17

なるほど、同趣旨の裁判例が多く見られますね。情報ありがとうございます。
浦和地裁の判決をみて、さらに驚きましたが、上記引用された次に、「将来の賃金請求の必要性の限度は本判決確定に至るまでとするのが相当であり、原告の請求もこれに反するものではないと解する。」と書かれていました。
ということは、原告は終期を定めない将来請求をしたのに、その請求の趣旨の解釈として終期があるものとしたようです。審理中に釈明があったものかもしれませんが、訴えの変更か一部却下かが必要でしょうね。

しかしこのように終期を定めるのがいつ頃からかというのは、判例集を見てもどうもはっきりしません。昭和53年に本判決確定までという主文例が見られますが、東京地判平2・4・6は無限定です。

さて、その当否はどうでしょうか。

投稿: 町村 | 2005/09/29 09:40

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