「NET時代の犯罪」象徴???
名古屋で、夫を殺害した妻が、実行犯になってくれる共犯者を出会い系サイト経由で探したというニュース、日経新聞では「ネット時代の犯罪」象徴と大見出しになっている。
園田寿教授のコメントも、出会い系サイトなどで知り合った共犯関係は足がつきにくいので、交友関係を洗う伝統的捜査手法では通用しないとされ、ネットワーク利用型の特色があるというニュアンスである。
そして、この事件はインターネットを使って実行犯を捜し、殺害に至った初めてのケースだという。
しかし、こういうのをネット時代の犯罪というのには非常に違和感がある。電話で共犯者と連絡を取ったのだったら、電話社会の犯罪という言い方をするのか? あるいは新聞の求人広告欄を連絡手段に使ったら、新聞時代の犯罪か?
なるほど、インターネットが普及することで、従来とは異なる経路の「出会い」が可能となった。それもマスコミを賑わすでもない普通の人が、見知らぬ人と知り合うチャンスは格段に広がった。でもそれは悪事をはたらく方向でのみ用いられることではない。ネットワークを通じて知り合った人が100人中99人まで悪人で、ストーカー予備軍で、とでも思っているかのような警戒感を露わにする論調が多いが、そうでないことは明らかだ。
むしろ真相は、100人の人にネットで知り合ったとして、その中にはわずかながらおかしな人や悪人が含まれているので注意が必要、ということだろう。
もちろん、売春等の風俗目的で運営されている出会い系が一般社会よりも危険に満ちていることは、それらが欲望産業だけに当然だ。古くから枕探しや美人局の類は洋の東西を問わず欲望産業に一定のリスクをもたらしてきたのだから。加えて性産業でも登録業者とヤミ業者とではヤミの方がハイリスクなのは当然だし、またヤミの方が「うまい話」に見えやすいというのも当然。そういう類のネットが通常社会より危険なのは、リアル社会と同様である。
ネットの方が足がつきにくいというのも、一見そう見えるのだが、実はそうではなく、むしろ逆であろう。あちこちに痕跡を残し、コンピュータには削除しても消えないデータが残り、監視の網がかぶせられているのは、このネット社会の特徴といってもよいかもしれない。園田先生のいうように交友関係を当たるという捜査手法は古いかもしれないが、被害者や被疑者の通信端末を捜査し、車の通行履歴を調べ、カード類の使用履歴や防犯カメラのログをチェックし、さらにはコンピュータのフォレンジック捜査を行うなどすれば、たちどころに行動履歴がばれる状況にある。
ということで、ネットワークが新たな犯罪の温床になっているかのような記事には、いつも違和感を感じるのである。その方が記事が面白くなるというのであれば、まあわかるのだが。
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