arret:研修医は労働者
新聞報道もされていた最判平成17年6月3日
判決要旨は以下の部分。
「研修医は,医師国家試験に合格し,医籍に登録されて,厚生大臣の免許を受けた医師であって(医師法(平成11年法律第160号による改正前のもの。以下同じ。)2条,5条),医療行為を業として行う資格を有しているものである(同法17条)ところ,同法16条の2第1項は,医師は,免許を受けた後も,2年以上大学の医学部若しくは大学附置の研究所の附属施設である病院又は厚生大臣の指定する病院において,臨床研修を行うように努めるものとすると定めている。この臨床研修は,医師の資質の向上を図ることを目的とするものであり,教育的な側面を有しているが,そのプログラムに従い,臨床研修指導医の指導の下に,研修医が医療行為等に従事することを予定している。そして,研修医がこのようにして医療行為等に従事する場合には,これらの行為等は病院の開設者のための労務の遂行という側面を不可避的に有することとなるのであり,病院の開設者の指揮監督の下にこれを行ったと評価することができる限り,上記研修医は労働基準法9条所定の労働者に当たるものというべきである。」
研修医については、ブラックジャックによろしくという漫画とか、ドラマとかの知識しかないが、この当然の判断が下されるには、本判決のような特殊な事案がでてくる必要があったくらい、自分では主張できなかったということか。
この事件は、研修医本人が死亡し、相続人である親が病院に最低賃金との差額を請求したのである。そこで最低賃金法・労働基準法の適用の有無が争われ、最高裁の判断に結びついたわけである。
類似の例は、研修目的で入国した外国人がさしあたり思い浮かぶが、他にたとえば公認会計士補のような職種はどうなっているのだろうか。
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コメント
政府は昨年度から研修受け入れ病院に対する補助を2倍にしました。利益を生まない研修医に生活費を保証するためです。しかし、それだけでは不十分です。
単に「労働者性」を認定するだけでなく、「研修性」を保証する措置が必要です。医師卒後研修には、研修できる病院の基準があるだけで、いまだに達成目標すらないのです。何もしなくても病院長がハンコを押しさえすれば研修修了。逆に、病院側の機嫌を損ねると、どんなに研修をやっていても修了認定されません。
投稿: Inoue | 2005/06/06 01:14