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2005/05/24

proc_civ:リピータ理論

昨日、山浦弁護士の発表内容をかいつまんで紹介したら、早速当日反論をしていた弁護士さんが二人、こちらのコメント欄でも反論にやってこられた。

山浦弁護士のリピータ理論は、確かに突っ込みどころ満載という感じがするし、個人的にそんなつもりはないという反論や、実感としてそんなことはない、という反論も沢山出てくるだろうと思うが、あまり意味がある反論ではない。

まあだいたい、あなたはそういうつもりで訴訟をやってるんですか?と問えば、100人の弁護士が99人までNoというだろう。もちろん仲間内や匿名の場では別かもしれないが・・・。

ところで、山浦先生のリピータ理論の中には、これまで重視されてこなかったり無視されてきた要素がいくつか表に出てきている。

第一に弁護士の事務所経営の必要性を前面に出した立論というのはこれまであまりなされず、弁護士制度論ではともかく、民事訴訟法の議論ではほとんどなされていなかった点である。
第二に、弁護士と依頼者とが基本的に利益相反の関係に立つという点も、当の弁護士や、それから多くの依頼人経験者にとっては自明のことだろうが、民事訴訟手続の現象を説明する要素としてはほとんど無視されてきた。

そしてこうした要素を新たな視点とクローズアップすると、多くの弁護士から世間知らずのナイーブな学者さん、と嘲笑されそうだが、当の弁護士さんたちの多くが、金のために事件をやる職業というイメージを禁忌し、広告をすることすら卑しいことのように語っていたのはそう昔のことではない。
#こんなこと書くと、まるで弁護士さん一般にケンカを売っているみたいだが、そのようなつもりはないので、怒ってコメントスクラム((C)小倉弁護士)の挙に出ないようにお願いしたい。

そしてリピータを獲得することが事務所経営に有利に働くことも、全く異論のないところだろう。当日反論の質問にたった女性の弁護士さんもその他の弁護士さんもおしなべて認めておられたところである。

そうすると、リピータを獲得するために、山浦先生のいう迅速かつ効率的な解決を目指さない行動が有効適切か、というところが問題なのだろう。

ところで、弁護士という「社会的正義」を実現する職業以外の分野では、山浦先生の指摘するような顧客獲得工作が広く行われていることも否定できないであろう。
次々販売とか、悪質なリフォーム業者の手口とか、先物取引業者とか、そういうのを引き合いに出すとまた受け入れられなくなるだろうが、リピータになってもらうために、なるべく時間をかけたおつき合いをするべく努力するということは銀行でも当然のようにやっていることだ。
もちろん、銀行だって、顧客の案件処理にわざと時間を掛けたり、迅速な処理ができるのに敢えてしなかったり、といったことをしているかと問われれば、していませんというに決まっているが、資産家の顧客をつなぎ止めるためにあの手この手を尽くしていることは否定できまい。

あとは、どこまでが倫理的に許されるか、抵抗があるか、ということと、どのような手段が顧客引き留めに効果的かということの問題である。
引き延ばすことが顧客の利益に結びつくこともあるし、そういう局面では敢えて引き延ばすこともあると認めるに吝かでない弁護士さんが沢山いるが、依頼者の利益に必ずしも結びつかない引き延ばしをすることは、決して認めないであろうと思われる。

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コメント

知人(50代女性事務職)は、
「医者は患者の病気がすぐに治っては困るので、だらだら時間をかけて通院させて儲けてる」
と本気で言ってましたよ。
 構造としては似たようなものでしょう。
 こういうことを言う人は、おそらく医学の水準を買いかぶっているし(今の医学でも、多くの病気は治らない)、医師の裁量権を大きく見積もりすぎています。保険医療である限り、検査項目から薬の使用目的に至るまでこまごました規制があります。好き勝手に治療法を決めることはできません。
 治りもしない老人をダラダラ通わせて儲けていると思われている整形外科だって、保険である限りは治療内容に規制があります。
 しかし、自費診療なら話は別で、健康に重大な悪影響を与えたりしない限り、非常に自由度は高いです。針、あんま、マッサージ、歯科治療の一部、美容外科がそれに該当します。

投稿: 井上 | 2005/05/24 13:42

要は、seinとsollenの区別がついていない人はどこにでもいる、ということですかね。

投稿: h | 2005/05/24 17:59

それは一人称についてもでしょうね?

投稿: 町村 | 2005/05/24 18:58

同じ法曹でも,おそらく裁判所と検察庁は,一般顧客のリピータを歓迎しないと思います(理由はご存知のとおり)。しかし,代理人弁護士先生のリピーターは,法曹間の信頼関係醸成に繋がるので良いことだと思います。書記官を大事にしていただければ,もっと良いです(w。

投稿: 謎の現職 | 2005/05/25 00:47

そうですね(一人称)。

仮にリピーターを増やすとしたら、時間をタラタラかける事件処理なんか多くは不可ですよ。
それは悪質リフォーム業者と同じでしょう?

投稿: h | 2005/05/26 01:40

T&Vさん
高橋です(@10年前モード);

生々しいことは、避けますけど。
司法改革(というか、民事訴訟法改正98のときも)の話のなかで、経済活動としての訴訟という観点は、まったく出てきませんでしたね。

確かに弁護士が経済的な話を避けていたとしても、これは、あきらかに研究者サイドの検討不足ではないかとおもいます。

制定法のレベルでも、判決後に、債務者の資産状況を確認する制度を手当てしないで民訴改正作業がおわってしまったなんていうのは、あまりにも、象牙の塔というイメージがありましたね。
経済活動としての訴訟が議論になったとすれば、やっと望ましい方向にうごいたかなという感じでとらえるべきでしょうね。
まあ、実務家的には、事件を早くおわらせたほうが、すっきりするのは間違いないし、リピータをどうのなんて考えたことはないですけどね。要は、厳しいスケジュールのなかで、なんとか処理していると今みたいになっているというのが、実態に一番近そうな感じですね。

すると、なぜに弁護士は、厳しいスケジュールなのかということでしょうけど、まっとうな弁護士ではない私には、分析の資格はなさそうです。(自分の場合には、生産性が低いからなんてことになるんでしょうかね。普通の先生では、多重会務者みたいなのも結構影響したりしている気もします)

おまけですけど、裁判員制度のもとでの国選報酬がどうなるかなんてことは、ちゃんと議論しないんでいいんでしょうかね。

投稿: 高橋郁夫 | 2005/05/28 08:17

まぁ、確かに「余計なこと」をやりすぎていると言うことはありますね。弁護士会でウダウダやってる暇があったら、その分「みんじそしょう」に専念すれば、書面ももっと早く出せるだろうし、弁論準備手続の結果陳述を丁寧にやって、裁判官の注意を喚起することもできるでしょう。だいたい、昼の日中に3時間も事務所留守にして、一文にもならない会議をやって喜んでるなんて、一般社会からは受け入れられないでしょうね。

投稿: h | 2005/05/29 00:48

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