arret:大審院判例変更の例
刑訴ではあるが、大審院判例違反を理由とする上告に対して、判例違反を認めつつ、判例変更をもって上告棄却した例がある。
最判平成17年4月14日
弁護人須藤純正の上告趣意は,判例違反の主張である。そこで検討すると,所論引用の大審院大正15年(れ)第1362号同年10月14日判決・刑集5巻10号456頁は,人を恐喝して財物を交付させるため不法に監禁した場合において,監禁罪と恐喝未遂罪とが刑法54条1項後段所定の牽連犯の関係にあるとしたものと解される。ところが,原判決は,被告人が共犯者らと共謀の上,被害者から風俗店の登録名義貸し料名下に金品を喝取しようと企て,被害者を監禁し,その際に被害者に対して加えた暴行により傷害を負わせ,さらに,これら監禁のための暴行等により畏怖している被害者を更に脅迫して現金及び自動車1台を喝取したという監禁致傷,恐喝の各罪について,これらを併合罪として処断した第1審判決を是認している。してみると,原判決は,これら各罪が牽連犯となるとする上記大審院判例と相反する判断をしたものといわざるを得ない。
しかしながら,恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものとは認められず,牽連犯の関係にはないと解するのが相当であるから,上記大審院判例はこれを変更し,原判決を維持すべきである。
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