arret:住民訴訟のおかげで損害回復できたのに・・
自治体に損害を与えた者に対して、不当な利益を自治体に返せという住民訴訟を提起したところ、その損害分を自主的に返済したため訴訟を取り下げることになった。
この場合、住民訴訟を起こすのに必要な弁護士費用は誰が負担するのが妥当か?
最高裁は原告住民が負担するのが妥当だと判断した。
住民訴訟で原告が最後までたたかい、勝訴判決を得た場合には、その必要経費である弁護士費用は自治体負担である。そういう法律の規定がある。
ところが、実質勝訴の取り下げの場合はそうは行かないというのが最高裁の理屈だ。
「地方自治法242条の2第7項は,同条1項4号の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合において,弁護士に報酬を支払うべきときは,普通地方公共団体に対し,その報酬額の範囲内で相当と認められる額の支払を請求することができると定めている。当該訴訟の提起及び追行が契機となって普通地方公共団体が経済的利益を受けることとなった場合であっても,当該訴訟が果たして,また,どの程度これに寄与したかを判断して,弁護士報酬相当額の支払請求を認めるか否かを決することは必ずしも容易ではない。そこで,同法は,同号の規定による訴訟が住民全体の利益のために提起されるものであり,訴えを提起した者の個人的な権利利益の保護救済を求めて提起されるものではないという特質も考慮して,上記の支払請求をすることができる場合について客観的に明確な基準を設けることによって,その判断を画一的に行うこととしたものと解することができる。このような同条1項4号及び7項の規定の趣旨及び文言に照らせば,同条1項4号の規定による訴訟を提起した者が,同条7項に基づき普通地方公共団体に対して弁護士報酬相当額の支払を請求するには,その者が当該訴訟につきその完結する時において勝訴(一部勝訴を含む。)したということができることを要するものと解するのが相当である。そうすると,訴訟は,訴えの取下げがあった部分については,初めから係属していなかったものとみなされる(民訴法262条1項)のであるから,地方自治法242条の2第1項4号の規定による訴訟が提起されたことを契機として普通地方公共団体が当該訴訟に係る損害について補てんを受けた場合であっても,その訴えが取り下げられたことにより当該訴訟が終了したときは,同条7項にいう「第1項第4号の規定による訴訟を提起した者が勝訴(一部勝訴を含む。)した場合」には当たらないと解するのが相当である。」
同様の判断は、名古屋市を舞台とする事件でも、最高裁により下されている。28日には市から弁護士費用をいったん受け取ったオンブズマンが利息付き(それも5%という高利!)で返還させられている。
でもこの判断は妥当とは言い難い。理論的には筋が通っているように見えるが、論理的ではない。
地方自治法の規定の趣旨が「訴訟が住民全体の利益のために提起されるものであり,訴えを提起した者の個人的な権利利益の保護救済を求めて提起されるものではないという特質も考慮して」いるという部分から、どうして弁護士費用の負担を画一的に定めているという結論が出てくるのか?
勝訴・一部勝訴という結果を文字通りに必要としているとの解釈は、それを実質的に判断しようとするのは困難だという部分から導かれているのであり、住民全体の利益のため提起される訴訟だという特質はそこでは考慮されていない。要するに住民訴訟の最も基本的な特質を考慮しないで、法解釈をしているのである。
ところで訴訟費用については、民事訴訟法に62条とか63条という規定があり、画一的に敗訴者負担というわけではなく、実質的に見て不必要な行為や訴訟遅延行為があればその行為者に負担させることになっている。このような公平に基づく分配は、裁判所にとっては本来的な任務であり、不可能な任務ではない。ついでにいうと、これらの公平に基づく分配ルールは取り下げにも準用されている。
もちろん住民訴訟の場合はいささか利益状況が異なるが、最高裁がいうような文字通りの勝訴または一部勝訴の場合に限ると解する必要はなく、実質的な勝訴となるべき任意の損害回復の場合も、訴訟提起がそれと無関係であったことが積極的に証明されない限り、勝訴と扱うべきである。
その弁護士費用負担部分についても、自治体は住民訴訟の被告だった者に請求すればよいのである。
最高裁が妥当でない判断をしてしまった以上、立法府がその役割を果たすべきだ。地方自治法242条の2、12項の規定を改正し、「一部勝訴を含む」という部分を「一部勝訴または監査請求後に賠償相当額の支払がなされた場合を含む」とすべきである。
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