arret:抵当権者の立ち退き請求、権原ある占有者にも認められる
またしても、抵当権者の権限が強められた。
最一判平成17年3月10日(朝日新聞より)
「抵当不動産の所有者は、抵当不動産を適切に維持管理することが予定されており、抵当権の実行としての競売手続きを妨害するような占有権原を設定することは許されない」と判断。抵当権者の妨害排除請求権を認めた。
抵当権は、不動産の価値に対する権利で、所有権のうち利用する権利には触れないというのが大原則だが、所有権者が抵当権者を第三者に利用させた場合は、不動産の価値が下がる可能性がある。
そこで、価値に対する権利を優先するか、利用に対する権利を優先させるかが問題となる。
この判決は、所有者が正当に設定した利用権(賃借権)についても、担保価値が下がって抵当権者が損害を受ければ、利用権を排除する権限を抵当権者に認めたもので、抵当権者の価値に対する権利を優先させたものだ。
このような抵当権重視・債権回収優先の思想は、バブル崩壊後の後始末期における特殊な傾向という説もあったが、竹中大臣がもはやバブル後ではないと宣言してもなお、抵当権重視傾向は変わらないのかもしれない。
詳しいことは、民法の先生がそのうちプログで解説してくれるだろうから、それに譲る。ちなみに、この最高裁判決をRSSでというエントリの日以来、最近の最高裁判決の更新がぴたりと止まっているのだが、これは偶然だろうなぁ。
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コメント
トラックバックありがとうございます。担保物権は(も?)苦手な吉永です。
担保価値を下げるような利用は許さないという発想は、平成11年11月24日の大法廷判決のロジックを想起させます。詳細はわからないのですが、この大法廷判決と対比しながら、担保価値減少の蓋然性など違いがあるのなかないのか、学生さんにはそうしたあたりを気にしながら読んでいただきたいと思います。
「最近の最高裁判決」は先ほど(本当に1時間経っていないのです!)RSSリーダで更新を知りました。借地借家法の賃料減額請求権と賃料自動増額条項の関係が問題になったものです。
投稿: 吉永一行 | 2005/03/10 13:47