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2004/12/28

Winny:正犯事件判決−誰に対する断罪か?

岡口裁判官のボツネタより、Winny著作権侵害の正犯事件判決を知った。
縷々述べている最後に、噂で聞いていた弁護人に対する批判の部分も確かにあった。

判決というのは被告人に対する文書であって、弁護人に対するものではない。そこのところを楢崎康英裁判長以下京都地裁刑事2部の裁判官は理解できていないのだろうか。
裁判官が場所柄をわきまえずに判決文で余計なことを書くということは、時々見られるが、これは卑怯なやり方だ。
というのも、被告人に向けた判決で弁護人を批判しても、弁護人はその批判に対して少なくともその裁判で不服を申し立てることができず(する人いるけど)、泣き寝入りを強いられる。その上今回のようにインターネットで公開されれば、いわゆる告発ページと同様で、効果としては一般人のウェブよりも遙かに大きいものがある。

弁護人の弁護活動に不当な点があると考えるのなら懲戒請求という手段がある。懲戒請求されれば、少なくともその当否や程度についての弁明の機会もあるし、一応公正な判断が得られる。担当裁判官が一方的に、それも他人宛の文書の中で批判を書くよりも公正だ。
自分の行動について公正さとは何かということを常々考えているのが裁判官だと思っていたが、中にはそうでない人もいるようである。

それと、批判の中身についても、判決文で書かれた限りの事実を前提にしても問題が多い。
第一に弁護人が入手した刑事捜査記録は、刑事裁判に関する情報一般と同様に、法的に守秘義務が課されているとすれば、それは依頼人との関係においてである。裁判所や検察に対して守秘義務を負っているわけではない。
もちろん第三者のプライバシーなど法的利益を保護することは必要だが、それはプライバシー保護の要請と記録の利用の必要性・相当性との利益考量にかかる問題だ。
全く事件処理と無関係なところで利用したというのであればともかく、弁護活動の一環であって必要な限度での利用は、一概に非難されるべきことではない。
第二に虚偽事実を述べて捜査記録を開示させたというのも、もともと証拠開示を全面的に行うという法の精神を無視した運用がまかり通っているから、そういう手段に訴えざるを得なかったという事情が想定できる。もちろんこの点は、そもそも全面開示が相当でないと考える人々とは議論がかみ合わないだろうが。

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コメント

 弁護人の主張立証は書面でやりましたので、法廷では延べ1時間も掛けていません。ほとんど検察官立証で費やした。それは公判調書で明かです。

 正犯弁護人があたかも開発者の協力を得ていたように受取られる方もいるようですが、それはうまくいかず、最終的には開発者逮捕で断念しました。
 当初「開発者と全く連絡が取れていない」状況であったので、検察官に開発者から押収した証拠(ソースコード)の開示を求めていました。
 途中で「連絡は取れたが肝心な所(ソースコード)は教えてくれない。」という状況に変わったのですが、ギブアンドテイクで細かい点は教えてくれたが、こちらの主張に使える材料が得られず、書面上は、「開発者と全く連絡が取れていない。証拠(ソースコード)の開示を求める。」のままでした。後に開発者が逮捕され、開発者からの情報提供は不可能となった。
 これを嘘をついたと言われるわけですが、結局、証拠上、winnyの動作についてはweb上の読み人知らずの情報しかなくなり、「初期NODEは不変」という事実認定となったり、winnyユーザー通路説となったりしているわけです。
 最終段階で訴因変更もあった。

 裁判所が言いたいのは、どうせ執行猶予なんだから、弁護人が賢明に早期に見極めて、早々に地裁審理を終え、文句があるなら、高裁で言ってくれということだと思います。
 田舎の裁判所では時々ある対応です。

投稿: 奥村(大阪弁護士会) | 2004/12/29 09:54

奥村 先生

こんにちは。

この判決についての私の個人的な意見は,情報ネットワーク法学会の掲示板のほうに書いたとおりです。

いずれにしても,弁護人の刑事弁護の実情を知らないのに,憶測だけに基づいて,判決中で弁護人に対する非難をするのは,刑事訴訟法の定める「判決」というものを前提にする限り,明らかに何らの根拠もない単なる越権行為であり,かつ,違法行為であろうと思います。
裁判官が裁判官としての職務を遂行する際には,そのようなこを厳に慎むように昔から指導されてきました。だから,判決文の多くは,木で鼻をくくったような簡素なものが多いんです。うっかり筆がすべってしまい,当事者に対する批判や非難だと誤解されるのを防ぐためです。そうしたやり方は,裁判官の処世術としては,不親切ではあるけれども賢明なものかもしれません。

投稿: 夏井高人 | 2005/01/01 12:46

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 以前にも取り上げましたが、Winny正犯の判決全文が掲載されました。  判決で指摘された弁護人批判は、大きく2点で、(1)著作権紛争解決のあっせんを申請する... [続きを読む]

受信: 2004/12/29 19:37

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