news:富士山、浅間神社のものとなる
ニュースによれば、「国と富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)の間で長年宙に浮いていた富士山頂の土地所有権問題で、財務省東海財務局は17日、神社の所有権を認めた30年前の最高裁判決に基づき、土地を無償譲与する通知書を神社に交付した。」
どういうことかというと、もともと富士山山頂付近は浅間神社が境内として管理していたのだが、それを明治政府が国有地にした上で無償貸与していた。
ところがこれは政教一致政策のためなので、戦後の日本国憲法の下では清算しなければならなかった。そこで昭和21年に、無償譲与する法律ができた。
(追記:トラックバックしてくれたkumakuma1967さんによれば、明治政府が国有化した太政官布告は「人民輻輳ノ地ニシテ、古来ノ勝区名人ノ旧跡地等是迄群集遊覧ノ場所」だから接収するといっているらしい。だから、その始まりは政教一致とは関係なさそうだ。しかし国が神社に土地を無償貸与する関係は、政教分離と相容れないので、一種の政教一致の帰結といってもよいかと思う。ともあれ、詳しくは上記リンクをご参照。)
問題は、その無償譲与の範囲で、政府側は山頂の神社境内だけを譲与しようとしたのに対して、神社は元々神社の境内として管理していた8合目より上の部分を返還せよと主張して対立していたのだ。
記事の中で触れられている30年前の最高裁判決とは
最判昭和49年4月9日判時740号42頁のこと。
この判決で、8合目以上の部分を返還対象とすると判断されていた。
これが何で今まで放置されていたかというと、富士山頂付近の県境自体がはっきりせず、登記もないので、手続が進まなかったそうで、今回は登記にかかわらず譲与する通知を発したということである。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- Arret:欧州人権裁判所がフランスに対し、破毀院判事3名の利益相反で公正な裁判を受ける権利を侵害したと有責判決(2024.01.17)
- 民事裁判IT化:“ウェブ上でやり取り” 民事裁判デジタル化への取り組み公開(2023.11.09)
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
コメント
あ、富士山接収については法源見つけてません。
都市部の社寺地接収についての太政官布達を見つけただけです。
「政教一致のために」は「無償貸与していた」にかかるということであれば納得です。
投稿: kumakuma1967 | 2004/12/21 00:52
くまくまさん、富士山山頂を接収した太政官布告は
明治四年正月五日太政官布告(いわゆる社寺領上知令)
です(最高裁の判決文より)
投稿: 町村 | 2004/12/21 01:02