LSATは日弁連法務研究財団で十分
ロースクール入試の不可欠な一部、適性試験は、現在DNCと日弁連法務研究財団が実施しているが、DNCは調査研究という枠組みで、いわば実験を行っている。その実験期間もとりあえず来年までで終わり、その先は分からない。
そこで、日弁連法務研究財団の新堂幸司理事長が声明を出している。以下転載。
平成16年12月13日
適性試験委員会委員長
新 堂 幸 司
財団法人日弁連法務研究財団
社団法人商事法務研究会
法科大学院入学者選抜のための適性試験については、既にご案内のように、財団法人日弁連法務研究財団及び社団法人商事法務研究会を母体とする適性試験委員会(以下「当委員会」という)実施にかかる試験と独立行政法人大学入試センター(以下「大学入試センター」という)主催にかかる試験とが併存している現状で、各試験とも、平成15年、16年の2回にわたり実施されてきたところです。
このうち、大学入試センター主催の適性試験に関しては、法科大学院協会の平成16年10月12日付News Letterによれば、さる8月28日に開催された法科大学院協会常務委員会において、文部科学省担当課長より、別紙のとおり「独立行政法人大学入試センターの第1期の中期目標期間が平成17年度で終了することに伴い、現在その業務内容の見直しが進められており、法改正を行うことは困難になった。また、調査・研究として現在の形式、規模で適性試験の実施を続けていくことも困難であ(る)」旨の報告がなされたもようです。
我々は、これまで当委員会主催の試験と大学入試センター主催の試験が併存して実施されたことを必ずしも否定的に評価するものではありません。すなわち、日本においては、このような専門職大学院の入学者選抜のための適性試験の実績がまったくなかったところ、実務家法曹の養成に実績を有する財団法人日弁連法務研究財団を母体とする当委員会と大学入学者選抜試験に実績を有する大学入試センターとが各々その得意分野を活かして過去2回の適性試験を実施し、そこから極めて有益な知見を取得することができたものと考えております。他方、将来に目を向けたとき、このように双方の知見が今後も分散されたまま利用されることは、国民のため、受験生のためには好ましいことではありません。
したがって、我々は、今回の独立行政法人の改革を機に、当委員会と法科大学院協会、大学入試センター等の関係各機関とが協力し、より質の高い統一的な適性試験の実施を目指すことが、日本の法曹教育の向上に資するものと考え、ここに協力関係の確立を呼びかけるものであります。我々は、米国のロースクール入学者選抜のための適性試験実施団体であるLSAC *と提携し、共同研究も開始したところであり、今後は、大学入試センターをはじめ、LSACとの提携関係を通じて取得した知見をも結集した適性試験の実施を目指していきたいと考えているところです。
既に述べたように、我々は、過去において2つの主体が各々適性試験を実施したことに意義を認めるものであり、また、大学入試センターの実績を高く評価するものでありますが、民間主体が実施する試験と同種の試験を独立行政法人も別途実施するというのは、やはり変則的な事態であったと言わざるをえません。これを機に、かかる事態が打開され、さらに、より高次の目標のために両者を含めた関係各機関が協力することができれば、何よりも法科大学院を目指す受験生に、これ以上望ましいことはないと考えます。そのためには、関係各機関から、当委員会への委員の派遣や共同研究の立ち上げ等が考えられるところであります。
なお、上記News Letterによれば、文部科学省として、法科大学院の関係団体が適性試験の実施主体となるとの基本方針を示すこととしているとのことですが、もし新たに別団体が設けられ、その団体を経由することにより大学入試センターによる試験を維持・継続していくような方策がとられるのであれば、既に当委員会という民間の試験実施主体が存在し、適性試験の実績も積んでいるにもかかわらず、それとは別個の第三の試験実施主体をさらに創出することになり、受験生及び各法科大学院に新たな負担を生じさせ、ひいては、適性試験に対する安定的・継続的な信頼性にも関わる事態になりかねないのではないかと深く憂慮しているところです。
我々としては、世界に誇りうる日本の法曹養成の実現という大きな目標に向かって、関係者が一致協力していくことを強く希望するところであります。
以 上
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