民訴の問題2
冬休み民訴の問題2である。
今度はAとか出てこないので、無様なことが起こらないはず。
XはYとの間で自己所有土地を5000万円で売却する契約を締結し、所有権移転登記手続を済ませた。
その1年後、Xはこの5000万円を返却して所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えをYに対して提起した。Xの主張は、本件売買契約がYから5000万円を借り入れるための担保として締結されたものだというにある。
この訴訟は担保として所有権移転登記がなされたという証拠がなく、Yが支払ったのは売買契約に基づく売買代金であったと認定されて、Xの請求棄却判決が確定した。
ところがその後、YがXを相手取って、5000万円の貸金返還請求訴訟を提起し、Xの署名捺印がなされた借用証書を証拠として提出した。Xは、Yが主張する貸金とはXが前訴で主張していた売買代金であり、前訴で売買契約の締結が認められた以上、いまさら貸金だと主張するのは既判力に触れ許されないと主張した。
審理の結果、前訴でXが主張した金銭のYによる支払と本訴でYが主張している貸金の交付とは同一であることが判明した。
裁判所としてどのように判断すべきか?
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コメント
町村 先生
こんにちは。
良い問題ですね。
前訴において反対債権による相殺により被担保債権が消滅したとの主張がなされていた場合と,そのような主張がなかった場合とで相違があるか,というオプション設問をかませておくと,もうちょっと面白い問題になったかもしれないですね。
投稿: 夏井高人 | 2004/12/28 09:58
夏井先生
そういう要素を入れるともっと面白くなりますね。ありがとうございます。
自分が解答できなくなったりして・・・。
一応未修者も対象とした問題ですので、論点は二、三に限ってあげないと、変数が多くなりすぎて分からなくなりますが、既修者向けには参考にさせて頂きます。
投稿: 町村 | 2004/12/28 10:28
町村 先生
夏井です。
たしかに,未修者と既習者とでは問題も別にしないと教育効果が減少してしまうことがあるので,頭の痛い問題ですね。
それにしても,いろんなことを配慮されながら授業や試験について考えておられる町村先生のところの学生さんたちは,とても幸せですね。
ちなみに,この話題と関連して,ちょっとずるいと思われるかもしれませんが,あることを考え始めています。
つまり,基本問題をボディとした上で,オプション設問を幾つか付随させ,学生の実力に応じてオプション問題もどんどん解かせるというようなメソッドが比較的有益なのではないか,と最近考え始めているのです。
これまでの大学の期末試験では,「***について論ぜよ」タイプのものが多く,正直言って,そういうタイプの問題のほうが採点しやすいというメリットもありました。
しかし,あくまでも実務家要請を根本目的とするロースクールでは,それぞれの実力に応じて学生が自らメニューを選択できるような試験問題の作成や授業方法の導入を考えるべきではないかと思うわけです。
もし,これまでの大学のゼミなどでは考えられなかったような本当の意味での「教育」がロースクールで実施されるのであれば,とても好ましいことだと思います。
ただし,教員の負担は大変なものになる。
現在の通常の大学における執務基準に従う限り,教員を消耗させ疲弊させてしまうことになりそうです。
かと言って各教員の授業コマ数を大幅に制限すると,大学経営それ自体が成立しなくなってしまいます。
とても難しい問題ですね・・・
投稿: 夏井高人 | 2004/12/28 10:46
「既判力」という言葉を
消した方が、
いろんな主張を
作り出す生徒が増えそうで
問題がおもしろくなりそうな
気がします。
投稿: 弁護士 壇俊光 | 2004/12/28 17:08
壇先生、その既判力という言葉を消すのは、解答する側の役割だと考えてます。
Xは既判力に触れるなどと言っているが、既判力というのは何々に対する判断について生じるのであって、売買代金としての金銭給付という認定はムニャムニャの判断に過ぎないのだから、云々と。
そういう初歩的なレベルの問題なのですよ。
ただまあ、その上で、●●則に基づいて、とか、××効により、とか、色々考えてほしいわけですけれども。
投稿: 町村 | 2004/12/28 17:19
町村先生お返事有り難うございます。
「既判力に触れ許されない」
と主張した場合、裁判所は
絶対に、△△主義を根拠にして、
○○効や××則は、
検討しないだろうなぁ、
と思ったというところです。
投稿: 弁護士 壇俊光 | 2004/12/30 14:03
壇 先生
こんにちは。
壇先生が「裁判所は絶対に、△△主義を根拠にして、○○効や××則は、検討しないだろうなぁ」とおっしゃる感覚は,すごく実務っぽくて分かりやすいです。
たぶん,そうだろうと思います。
でも,事案にもよりますが,もしそのような主張があれば,□□の濫用については,もしかすると裁判所も検討してみようという気を起こすことはあり得るかもしれませんね。
なお,正確には,この手の主張は,事実主張ではなく法律上の意見であるのに過ぎないので,当事者から主張する必要がないと思われます。しかし,実務慣行上は,裁判所は,主張責任の理論とは無関係に,当事者からの主張がなければ判断をパスするのが通例ではないかと思われます。もし主張はないけれどもその点についても判断すべきだということが訴訟記録上明らかな場合には,裁判所は,弁論において,当事者に対し,何らかの主張をするように事実上促すこと(正式の釈明ではない。)が比較的多いのではないかと思われます。
投稿: 夏井高人 | 2004/12/30 19:20