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2004/11/28

news:オレオレ詐欺加害者の匿名人に対する訴訟

おれおれ詐欺の被害者が、だまされて振り込んだ現金を取り戻そうと、現金自動預払機(ATM)の振り込み控えに記された片仮名の名義人を相手に提訴したところ、富山地裁(剱持淳子裁判官)は27日までに「氏名や住所を特定していない」として審理入りせず退ける「訴状却下命令」を出した。地裁は被害者側の「地裁が職権で銀行に照会してほしい」との要請にも応じなかった。
(河北新報社http://www.kahoku.co.jp/news/2004/11/2004112701002791.htm)

思わぬところから、氏名住所を特定できない場合の訴訟提起の道が開けるかも知れない。

訴状に当事者の特定をしていなければ、当然不適式として却下される。送達すらできないから、訴訟が係属しようがない。
しかしながら、同じ事件を報じた紙版の中日新聞によると、「東京地裁で同種の方法が認められた例も示した」とある。これは却下しないで、例えば調査嘱託をしたということだろうか?
ちょっと考えにくいが・・。事実上問い合わせをしたということならあり得るかもしれないが。

弁護士会照会で銀行口座の有無・特定情報を照会するということは広く行われているようだが、この件では拒絶されたのであろうか?

ところでこの氏名不詳の者の責任追及は、プロバイダ責任制限法で発信者情報開示命令の立法につながった問題状況と似ている。そこでも立法前は、匿名人に対する訴えは可能かとか、匿名人に対しても証拠保全は可能だとか、色々議論があった。
発信者の責任を直接追及できない以上、中間のプロバイダに責任追及が向けられて、この立法に至ったわけだ。

銀行と詐欺加害者との関係でも、加害者やその協力口座名義人が特定できない場合、中間の銀行に責任追及が向けられる可能性は十分にある。請求が通るかどうかは別にして、口座不正引き出し被害の事件では、不正引き出しを見抜けなかった過失責任を銀行に問うのが常である。
詐欺に使われる口座であることを見抜けずに利用させている責任、というのは難しそうだが、詐欺に使われている口座であることが明らかであるのに、その名義人情報を開示せず、詐欺の責任追及を妨げたことの責任というのであれば、開示義務を基礎づけられれば成り立つだろう。
開示義務は、銀行振込において、一種の利用契約が成立し、その契約上の信義則に基づくということで基礎づけられないだろうか?

なお、もちろん口座名義人が詐欺加害者自身とは限らないのだが、一つの手がかりではある。

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コメント

本件は、lc-netにも参加されている福島先生が関与されているようです。
http://blog1.fc2.com/fukushimatakeshi/index.php

 本人確認法のほかにも、やくざの資金源の一つにもなっている口座売買の罰則化などともセットにしないと、開示した結果が、詐欺師とは別人ということが大半を占めるかもしれませんね。
 それに、裁判所を介しての開示ルールを確立しないことには、結局のところ、闇名簿屋(闇興信所)という裏ルートを使わざるを得ない人たちを作ることになり、逆に違法行為を助長することになりかねません。
 裁判所を通じた正式な開示を認める方向でルールが確立されることを期待します。銀行は違法性がないことさえ国が担保してクリアな手続きが定まれば、たんたんとそれに応じてくれるでしょうから。法律違反のリスクをかぶってまでは、開示することがないというのはISPと同じでしょうね(--;)・・・。

投稿: 鈴木正朝 | 2004/11/28 11:32

福島@富山です。
共同配信記事の全文は、下記です。
http://www.kitanippon.co.jp/cgi-bin/news.cgi?id=A100#0002

本件のポイントは、本当は「被告不明」ではなく、被告は分かっているということです。
銀行支店口座番号とカタカナの氏名は、分かっているのです。
さらに、銀行と警察は、住所と漢字を知っているのです。
ただ、原告代理人弁護士(民間人)には教えてくれないだけなのです。
ですから、裁判所が調査嘱託を通じて、そのちょっとの差を埋めてくれるかどうかが、問題なのです。

特定の銀行口座の債権者たる○○(カタカナ)という人物は、社会に1人しかいないことは明白です。

後は、裁判所が形式論理に拘泥して、門前払いするか、ちょっと工夫するかの違いだけなのです。
担当裁判官において、センスというか、社会的妥当性を備えた判断力があるのかが問われていると思っています。

実際に、住所不明・氏名カタカナ(ATMの控えに表示された情報)で訴状を受理し、調査嘱託したケースが、いくつかあることを確認しています。
それらの成功例では、銀行の回答によって訴状が補正され、訴状の有効性の問題は判決に現れません。
したがって、積極判例が公表されにくい構造になっています。

なお、現在も情報収集中ですので、有益な情報をお持ちの方は、是非ご協力をお願いします。

投稿: 福島武司 | 2004/11/28 16:36

福島先生、こんにちは。
ご苦労様です。

でもメールアドレスなど本人を事実上特定できる情報があったとしても、それを記載して訴状が適法になるわけではないし、送達前に行う調査嘱託は当該事件について法律に則った手続とは言い難いですね。
事実上行われていることは別論ですが。

やはり、提訴に必要な情報収集のための手続とか、銀行に対する情報開示の仕組みが必要に思われる事例です。これをテコに、そういう方向に立法が試みられると面白いのだけど。

投稿: 町村 | 2004/11/28 16:50

>でもメールアドレスなど本人を事実上特定できる情報があったとしても、
>それを記載して訴状が適法になるわけではないし、
適法にならない理由はなんでしょう?理由もつけずに否定するのは法律で飯を食う人間のすることではありませんね。
本人が特定できるのであれば、訴状が却下される理由はありません。民事訴訟法は、「当事者の住所、居所その他送達をすべき場所が知れない場合」に、訴状を公示送達によって送達することを予定しているからです。

この点については、前に書籍に掲載する私の原稿を送信させていただきましたが、町村先生は全く読まれていないようですね。

投稿: kageyama | 2004/11/30 16:44

なんか、喧嘩腰でこわい弁護士さんだけど。
もちろん送ってくれたファイルは読みました。

で、私は氏名不詳人にも法的手段がとれる道が開けるといいなと思って注目したので、こう噛み付かれると困ってしまうな。

でもカタカナ口座名しか分からないといって提訴して、公示送達して欠席判決をもらえるとしたら、悪用する奴が出そうだとは思わないの?

投稿: 町村 | 2004/11/30 19:28

裁判所が調査嘱託を採用するなり、職権で問い合わせするなりすれば、公示送達の弊害は発生しません。
また、銀行への届出住所が架空だった等の理由で公示送達になったとしても、ATM振込明細もないような事件で裁判所が請求を認容することはありません。
どこから公示送達の悪用なんて話が出てくるのか理解できません。

投稿: kageyama | 2004/12/01 10:14

調査嘱託に応じて相手方の情報が開示されることを前提に話を進めるのなら、いいですけども、調査嘱託だって制裁があるわけではない任意の手続ですし。

カタカナ名住所不明で提訴して裁判所が調査してくれて、不明なら公示催告ということが一般的に行われるようにになると、それを悪用する奴が出てくると思いますが?

投稿: 町村 | 2004/12/01 10:27

通常の公示送達の悪用とカタカナ名住所不明の場合とで、どこがどう違うのか分からないですね。
カタカナ名住所不明の場合で、今までできないような悪用というのはどういう方法でしょうか?町村さんはできるできると言っているだけで、どのような方法なのか全く明らかにされていませんね。
私は、利用明細がないと請求原因が認められないこと、口座番号で差押債権を特定する場合、当該預金債権が債務者の責任財産に属することを立証する必要があることから、公示送達一般の悪用はともかく、カタカナ名住所不明での提訴が認められることによってできる特有の悪用というのは思いつきません。
それより、「本人を事実上特定できる情報があったとしても、それを記載して訴状が適法になるわけではない」理由はなんなんでしょう?こちらも明らかにしていただきたいと思います。

投稿: kageyama | 2004/12/01 14:13

>公示送達して欠席判決をもらえるとしたら
念のため確認しますが、公示送達で擬制自白の効力が生ずると勘違いされていませんよね。

投稿: kageyama | 2004/12/01 14:16

公示催告によっては擬制自白が成立しないというのは明文規定がありますから、説明するまでもないと思ってましたが・・・

投稿: 町村 | 2004/12/01 14:36

事実上、特定できる事実を示したら、訴状に氏名を書いたと言えるかどうかは解釈問題でしょう。

建前としては、日本法が個人の識別情報として公式に認めているのは、少なくとも日本国籍のある人については戸籍名なので、それが必要です。
けど、実際は社会に通じている名称とソゴが有り得ますから、解釈の余地があります。
手続きの種類や段階、原告なのか被告なのかによって違ってくるでしょうが、本来の特定手段にかわる指標としてどこまで許すかという解釈です。
でリジッドな解釈を取るなら、裁判所の調査がないと本来の特定手段にたどり着かない情報ではダメということになります。

蔭山さんは理解できないみたいだけど、私がそう主張しているわけではないんですがね。
もう佐藤さんの発表おわった・・

投稿: 町村 | 2004/12/01 16:09

本人を事実上特定できる情報があったとしても、それを記載して訴状が適法になるわけではないのは「リジッドな解釈をとるからだでは答えになっていませんね。
それではリジッドな解釈を取る理由はなんでしょうか?
説明していただかないと理解できるはずがありません。

現に、住所不明カタカナのままの判決は多数出ており、当事者の氏名は戸籍と一致する必要はないという判決もあります。手前みそですが、下記は私の事件です。
判タ1157号287頁
http://www.hanta.co.jp/hanta-1157.htm
11(東京高裁平15・5・27決定)
債務者の氏名をカタカナ表記した場合と同じカタカナ表記がされている預金口座
を債務者の預金口座であると認定して、当該預金債権に対する債権差押及び転付
命令の申立てを却下した原決定を取り消した事例

>私がそう主張しているわけではないんですが
町村さんが、「本人を事実上特定できる情報があったとしても、それを記載して訴状が適法になるわけではない」と書かれたのです。

公示送達の悪用の例はどのようなものでしょうか。

投稿: kageyama | 2004/12/01 16:37

私はアメリカの経済紙「ウォールストリートジャーナル」の記者です。東京支局で働いています。今、オレオレ詐欺について記事を書いています。この詐欺の手口をできるだけ広く、世界で報道したいと思っております。そのため、実際に被害に遭った方のお話を直接に伺わせていただきたいと思っております。よろしくおねがいします。martin.fackler@wsj.com。電話番号は03-3595-7564。

投稿: マーティン | 2005/03/16 14:42

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