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2004/11/05

LS民訴課題1>運行供用者をめぐる問題の考え方

10月25日のLS民訴課題の考え方を紹介しよう。

 問題の設例は、簡単に言うと、会社の元従業員が無断でもっていた合い鍵を使って無断で会社の車を運転し、事故を起こしたという事例である。
 被害者は事故車が会社の所有であると主張して運行供用者責任を追及するが、会社は運行供用者ではないと否認している。そこでの主張立証すべき事項と弁論主義の適用があるかどうか、ということである。
 自賠法3条の要件として会社が運行供用者であることが必要となるが、運行供用者概念は不確定な価値概念なので、これを基礎づける具体的事実が必要となる。ただし、弁論主義の適用があるのが運行供用者という抽象的なレベルなのか、具体的事実のレベルなのかは争いが一応ある。
 さらに、具体的事実のレベルで弁論主義の適用を考えていくにしても、そのすべてを運行供用者該当性主張者、つまり被害者側が主張立証責任を負うのか、その中で分配があり得るのかが問題となる。裁判実務で有力なのは運行供用者とされる者について事故車の所有権や使用権などが立証されれば、特段の事情がなければ一応運行支配が車に及んでいると認められるので、その特段の事情は運行供用者であることを否定する側が主張立証しなければならないとする考え方である。
 これを適用するとすれば、本問では事故車の所有権について会社の自白が成立し、運行供用者該当性を否定す る具体的事実を主張しなければ運行供用者であることが認められてしまう。証言では運行供用者該当性を否定する事実が明らかになり、裁判所もそれらを元にすれば運行供用者該当性を否定して請求棄却となるはずだが、会社は釈明にもかかわらず、それらを主張しようとしない。「事故当時、Aが運転していることについてはY工業の関知するところではなく、運行支配は及んでいなかった」という主張はしているので、これが主要事実で、これをさらに基礎づける具体的事実は弁論主義の適用がないと解するのか、それとも具体的事実自体も主張責任がかかるのか、判断が分かれるところである。
 仮に具体的事実の主張が必要だとすると、結局運行供用者該当性を否定できないということになり、その他の要件が備わっている限り請求認容ということになる。
 問題はこれでよいかどうかということであり、不確定概念に関する弁論主義の適用を、抽象的な概念自体とするのか、具体化した事実のレベルに及ぼすとしても、それをどのレベルまで及ぼすのか、具体的事実のレベルに及ぼすこと自体の問題点(様々な諸事情を評価の基礎とできるので、どの事実が請求原因となりどの事実が抗弁事実なのか明確でなく、主張立証の目安が立たないなど)と、それらを間接事実だと位置づけて弁論主義の適用を否定した場合の問題点(特に不意打ちの可能性)とを比較考量し、論じることになる。

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