ADR医療事故判定制度
南山大学法科大学院の加藤良夫教授が主催して検討が進められている医療事故市民判定制度の模擬判定会が、本日13日に南山大学法科大学院棟で開催された。
南山大学卒業生を中心に依頼状を発送して集まった市民13名が、朝10時から16時くらいまで参加し、二件の医療事故事例について補償の要否を話し合った。
この市民判定制度は、医療過誤ではなく、過失の有無を問わないで医療の結果生じた意外な損害について、補償するかどうかを決めるものとして構想されている。議論の中では、過失の有無を問わないことにみんな納得していても、家族がきちんと納得していたのかどうか、生活保障として補償をするのかそうでないのか、財源の限界はあるのではないかなど、制度自体の問題にも踏み込んだ熱心な議論が展開された。
第一例は心臓カテーテル検査中に、無過失で血管が傷ついてなくなったという例。これについてはほとんどの方が補償すべきと答えた。
第二例は良性腫瘍で失明の危険が5年後に迫っているとして除去手術を受けたが、手術の結果無過失で失明してしまったという例。これについてはほとんどの方が補償すべきでないと答えた。
特に面白かったのは、補償はしないけれども、失明した人が自立してその後の人生豊かに暮らせるようなバックアップ(精神的ケアとか資格取得のガイドとか)をすべきだという意見がかなり多く見られたことだ。
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コメント
こうした試みを面白く拝見いたしました。過失責任という不法行為の要件について、あるいは金銭賠償という不法行為の効果について、根本的なところで素朴な疑問をもたれたということは、不法行為についてはさらに研究して行く余地があるのだなあと感じさせられました。
民法学者は、損害賠償をさせるか否かの基準を「過失の有無」、不正確を承知でいうと、要するに医者はその事故を回避する可能性があったかという点に求めています。今回は「損害賠償」ではないものの、補償金を払わせるか否かについて、2件で見解が分かれたようですが、どの点が判断を分けることとなったのか、それが新たな不法行為の要件論を考える上で参考になるかもしれないと興味を持っています。
駆け出し教員でありながらうるさくコメントしてしまい恐縮です。これからもよろしくお願いいたします。
投稿: よしなが | 2004/11/14 17:44
よしながさん、コメントありがとうございます。
判断が分かれたのは、色々ポイントがありますが、設例の一つは一万分の一の確率で生じるリスクが現実のものとなって死亡に至った事例、もう一つは20%程度のリスクがある手術でそれが現実のものとなり、失明したという事例でした。
一万分の一の方が保障を認めるべきで、20%のリスクが分かっていた方は被害者もそのリスクを十分引き受けていたはずだというのが多数意見のようです。
投稿: 町村 | 2004/11/14 23:56