action:カタカナ名住所不明人への提訴
なりすまし詐欺被害者の振込金返還訴訟に挑む福島先生から、トラックバックを頂いた。そのトラバ元にある抗告理由には以下のような事例が紹介されていた。
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抗告人代理人が調査したところ、本件と全く同様の訴状において、訴訟を有効に係属させた事例として、東京地裁民事第6部の先例があった。経過は、以下のとおりである。
平成16年1月27日
「被告住所不明・氏名カタカナ」で訴状提出、併せて調査嘱託申立。
同年2月2日
東京地裁民事第6部書記官より調査を職権で行う旨電話連絡。
送付嘱託を実施(嘱託事項は原告申し出のとおり)。
同月9日
当該銀行支店より口座名義人の住所・氏名が回答される。
同月13日
訴状訂正申立書提出(回答結果に基づく被告の住所・氏名の補正)
このように、特定の銀行預金口座の債権者である被告について、原告の把握する情報が口座番号とカタカナの氏名のみである場合、「被告住所不明・氏名カタカナ」のまま訴状を受理した上、速やかに調査嘱託を行った例が、東京地裁で現実に存在している。
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これを応用すると、少なくともアクセスプロバイダがメールアドレスも提供しているような場合に、
「被告メールアドレス 住所不明」で訴状を提出し、併せて調査嘱託を申し立てると、東京地裁では職権で嘱託してプロバイダからメールアドレスを使用している契約者の住所氏名の回答を得て、訴状訂正すればよいということになりそうである。
少なくとも発信者情報開示の本案訴訟を提起して、発信者の権利侵害が「明らか」であることの証明責任を尽くして、勝訴判決確定を待って発信者を特定するという手順を踏む必要は全くなくなる。
違いがあるとすれば、情報保有者の銀行とプロバイダとで、調査嘱託に応じる蓋然性が大きく異なるというところだろうか。
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コメント
口座名義人カタカナを「オレヤマサギタロウ」とします。この場合、犯人は、自分は「オレヤマサギタロウ」と名乗っていることになります。
「被告 住所不明 オレヤマサギタロウ」で、「当事者の氏名又は名称」の記載(民訴規2)が満たされていることは明らかですが、メールアドレスは送信者の自己を示す名称ではないので、「被告メールアドレス 住所不明」で「当事者の氏名又は名称」の要件を満たしていると言えるかどうかですね(住所に関しては、それが不明の場合の規定がありますが、氏名不詳の場合の規定がありません)。
また、例えば、届出住所氏名が架空で公示送達になる場合、銀行口座であれば、架空名義のまま、その口座を差し押さえることが可能です(その口座の預金が犯人の責任財産なのは明らかなので)。しかし、メールアドレスの場合、架空名義人に公示送達しても、執行すべき責任財産の所在が不明ということになります。
後者は事実上の違いかもしれませんが、裁判官が調査嘱託をためらう一要素になりそうな気がします。
投稿: kageyama | 2004/12/01 10:34
口座名義人の表示は銀行との契約上用いられている名称であり、メールアドレスはアカウントなりユーザーIDなりを介してメールプロバイダとの契約上用いられている名称でしょう。
前者は実名と乖離しないことを要求されていますが、実名そのものではないです。
結局、裁判官が「これ名前じゃないじゃないか」といえるかどうかの違いであって、本質的ではないでしょう。
むしろ執行対象の財産と結びついていることの方が重要かも知れません。
その財産を取り返すという実質に着目すると、氏名特定が困難な者を被告とするよりも、銀行を被告として、氏名特定困難な詐欺者に対する返還請求権をもとに、詐欺者の銀行に対する預金債権の代位行使をするという構成の方が通りやすそうに思います。
それでも審理の過程では口座名義人の特定が必要になってくるでしょうけど、少なくとも訴状却下命令は避けられるでしょうし、これなら調査嘱託も、いやそれ以前に釈明で名義人の住所氏名を明らかにすることが期待できるかもしれません。
投稿: 町村 | 2004/12/01 10:53