よく勉強しているのは誰か?
さるさる日記10/18より
「法曹養成にかかわるすべてのみなさん。ロー生と現行生それぞれの合格者を予定より増やしましょう。しかも、研修所の給与制を維持しましょう。国民のみなさん、彼らがここまでがんばっているんですから、税金を使わせてください。決して官公庁のような無駄金ではありません。必ず国民の福利として帰ってくる税金です。
そして、法曹三者のみなさん。いま、ローで、現行で、必死に努力している受験生と直接に向かい合ってください。机上の空論で、現行生のほうができるはずだとか、ロー生こそ本当の勉強をしているとか、決め付けないでください。
我々、実務法曹が事実を出発点にせずして、誰が実務教育なんて行なえるんですか。」
宮武 嶺先生のホームページにあった記述である。
合格者を一方的に増やすだけというのはあまり賛成できないが、ロースクールで勉強を一生懸命やり、それなりの法律知識や法的分析能力、事案処理能力を身につけた学生たちが報われる制度であることこそが必要だ。
そのような能力を身につけさせる教育をロースクールがしているかどうか、それが問われているのだが、それは結局のところ教育実践の中で示していくしかない。
少なくとも一審控訴審の判決文を読まされて四苦八苦しているレベルから、法律家のように考える能力を身につけるためには、前提となる法律知識の修得はもちろん、基本的な理解を具体的な事案にいかに応用していくかを、数多くの課題によって鍛えていくしかない。
もちろん修得したり鍛えたりするのは学生自身であって、我々はそれを介添えするだけなのだが。
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コメント
現行にて司法試験を目指しているものです。
現在のロースクールでそもそも幅広い人材が集まっているとお思いですか。
そして、今後、幅広い人材が集まるとお思いですか。
結局は、年齢も若く、お金に余裕がある者しか通えない制度になってしまいましたね。
予備校を批判する人たちは、自分らの講義能力のなさを棚にあげて予備校の弊害を盛んにおっしゃっていますが、予備校で実際に授業をしているのは実務家です。
正直暗記だけで合格できるほど現在の司法試験も甘くありませんし、新司法試験も結局は受かってナンボの試験なのです。
幅広い法律学を教えることもいいですが、そんなことをしていると合格率が下がり、結局は淘汰されることがわかっていないとすれば、悲劇ですね。
知り合いのロースクール生が言っていました。
大学の時に教授の授業がわからないのは自分の知識不足のせいだと思っていたが、ローに入ってもわからなかったと・・・
投稿: ロビン | 2004/11/01 04:19
なんともコメントしづらい書き方ですね。
法律学に限らず、勉強は、どういう手段を使ってであれ、できるようになった人が勝ちです。
ロースクールの教育力が低いという批判は当たっているところもあるだろうし、先生たちがもっと力を注ぐべきなんでしょう。
でも学生さんは、自分で分かるようになるまで勉強すればよいし、ロースクールにせよ予備校にせよ、使えるものは何でも使って、自分の能力を高めていくだけのことです。
あと、幅広い法律学を教えると合格率が下がる、ということであれば、その試験制度は欠陥がありますね。
投稿: 町村 | 2004/11/01 10:56
はじめてコメントさせていただきます。miyanoと申します。町村教授のブログは多方面にわたって様々な見解を載せられており、いつも大変興味深く拝見させていただいております。
さて。町村教授のコメントを読んでいると、どうしても違和感を感じざるを得ません。これは私の誤解でしょうか?以下具体的に書きます。
まず、
>法律学に限らず、勉強は、どういう手段を使ってであれ、できるようになった人が勝ちです。
というのは、きっと「どのような制度であったにせよ」ということですよね。
そして、
>ロースクールの教育力が低いという批判は当たっているところもあるだろうし、先生たちがもっと力を注ぐべきなんでしょう。
というのは、非常に「第三者的に」聞こえてしまいます。
加えて、
>でも学生さんは、自分で分かるようになるまで勉強すればよいし、ロースクールにせよ予備校にせよ、使えるものは何でも使って、自分の能力を高めていくだけのことです。
「でも」、学生には法科大学院であれ、予備校であれ、自己選択で能力を高めていけ、とおっしゃられる。
司法試験の受験資格と結び付けられた法科大学院制度では、自由に「自己選択」が出来るわけではありません。金銭的にも、時間的にも、様々な要因があるので。これらの要因は、奨学金制度があるから、というような場当たり的な措置で簡単に改善されるものではないと思います。
そして最後に、
>幅広い法律学を教えると合格率が下がる、ということであれば、その試験制度は欠陥がありますね。
町村教授は、ロビンさんの書かれた「幅広い法律学」の意味を誤解していらっしゃいませんか?
そもそも試験たるもの。時間的制約もあり、試験の様式的な制約、評価上の理由もあり、一概に「欠陥のない試験制度」などはありえません。
大学の教授にたとえ話を書くのは非常に失礼であることは自覚しているのですが、たとえば、民法で債権者取消権の問題を考えてみます。そしてそ「試験」で債権者取消権の法的性質が問われたとしましょう。そこでAさんは、形成権説を書いたとする。Bさんは、判例の立場を書いたとする。そして別のCさんは、責任説を書いたとする。どうやって採点しましょう?全ての人が「その内容が筋道立っていればOK」というのでしょうか?数千人の解答を見るときに、逐次そうした解釈論を精緻に判断していくのでしょうか?出来たらきっと、素敵ですね。僕はそんなの、無理だと思いますが。(一人説まで含めてもし出来るのであれば申し訳ありません。)
試験というものにはきっと一定の制約があります。そして合格に向けて努力する人は、その試験合格にとって必要かつ合理的な手段を効果的にとりたいと考えるのが自然ではないでしょうか。そのためには、ある一定の「無駄を」排除することは、やむを得ません。必要条件として、「幅広い法律学」は必要であっても、それこそ必要以上に「幅広い法律学」を要求するのも、何か変です。
あと私も最後に、そもそも町村教授も、現行司法試験合格者に対して、何らかの違和感をお持ちなのでしょうか?
長文駄文、申し訳ありませんでした。
投稿: miyano | 2004/11/01 18:38
miyanoさん、
勉強はできるようになった者が勝ちだから、自分で自分にあった勉強方法を見つけて頑張るしかない、というのが前に書いた趣旨です。
幅広い法律学というのも、はっきりしませんから勝手に解釈しましたけど、歴史的な理解とか法社会学的な理解のような、法律学のバックグラウンドの知識を修得することは大事ですよ。また裁判実務の基礎を学ぶことも大事です。新司法試験はそういう勉強も含めて法科大学院で学んだことを試される試験であるべきだと考えています。ま、限界はもちろんあるでしょうがね。
投稿: 町村 | 2004/11/01 19:46
ロー制度に対する根本的な疑問なんですが。
実務的な内容ではない、法学の基礎理論や法律の解釈
運用能力の基礎は、そもそも学部で身につけるべきも
のではないのでしょうか?
それができないでなんのための法学部だったのか。
ロー制度というのは法学部教育の失敗を認めることを
前提に成り立っているのではないかとも思ってしまい
ます。
法学「教育」というものに対して現場の教員の方の自
己反省、研鑽などがどれほどなされているのでしょう
か?
自分で学ぶものだ、というのは乱暴です。
せめて自学自習できるだけの基礎力を身につけてから
のことでしょう。
投稿: きゃんた | 2004/11/02 00:27
例えば、債権者取消権の問題が出てきたときに、回答者がどの説を採っていようとも、試験委員は普通に採点できると思うのですが。論文試験が学説に対する知識を問う試験ならば、回答者の論述が既存の学説を正しくトレースしているかを見ないといけないので採点者はその学説を知らなければいけませんが、そういう試験ではないので、そういう学説を唱えている学者がいるかどうかを知らなくとも、当該論述の論理だけを追いかけていれば足りるわけですから。
ついでにいうと、「無駄を省く」ことにこだわりすぎて知識にゆとりがないと、現行司法試験でも、かえって遠回りしてしまうと思うんですけどね。司法試験予備校がいうほど、そして、法科大学院積極論者がなじるほど、現行司法試験って、予備校的な「無駄を排した勉強」をした人々が合格する試験でもないんですけど(この点は、司法試験予備校のいうことを丸飲みしている大学の先生がよくないとは思います。)
投稿: 小倉 | 2004/11/02 00:55
高名な町村先生に、当ホームページに来ていただけるとは、望外の幸せで、感激しました。
私は、弁護士会の人間としては、現行司法試験のみの制度を前提に、合格者の数はせいぜい2000人でいい。これを、東西両研修所を設け、徹底的に実務で鍛える。2年間は最低やる。
ただし、司法研修所は最高裁のものではなく、広く討論して寄りよりものに作っていく。
このほうが
1 ローより、公平性・透明性・開放性に優れている
2 実務教育できる実務家教員はそんなにいないので研修所に
当面集中
3 出るときの心配がなくのびのび勉強できる
というのが自説でした。
ローができちゃいましたので、しょうがありません。
講義の質の向上のためにも
東大150、京大100など定員をすべて半数で3000にする。
新司法試験の合格者は2500とする。
これで合格率は8~9割になります。
入り口で閉めて出口は楽にするのです。
現行司法試験の合格者数は500とする
(全修習生のうち、500人は任官・任検を強制)
今の教え子たちの、25の春、35の春を泣かしたくはないです。
でも、司法試験予備校の講師でもある私は現行試験試験受験生が、死に物狂いで勉強していうのを知っているので、現行試験は終わった試験として、滅びてしまえといわんばかりの、日弁連会長や二弁の会長談話は信じられません。
投稿: 宮武 嶺 | 2004/11/02 02:56
え、私ってそんな高名?
そういう自覚はないんですけど・・・。
それはともかく、入り口で閉めるのはこれまた難点が多いです。大学が弊害の典型でした。
教育機関はすべからく、チャレンジするのは誰でもできて、内部で進級するのは難しく、卒業は一定の資格に結びつくだけの能力を身につけた人だけにするのが理想です。死に物狂いで勉強している学生さんたちにもフィットするでしょう。
目の前の教え子に不可をつけたり、進級させなかったりするのは、顔が見えるほどに少人数の法科大学院では心理的にも抵抗があるし、経営的にも上策ではないだろうから、どの法科大学院でもそうするだろうとは考えにくいですが。
投稿: 町村 | 2004/11/02 10:02
宮武先生がなぜ入り口を狭くするとおっしゃっているのか理解されてますか?
ローに入るには、何百万ものお金が必要なんですよ?一般庶民には相当の覚悟を決めないと、とても出せない額なんですよ?!
もっと金額が安く、夜間大学などでもあれば話は変わるのでしょうが、町村教授は今の仕事をやめて、法科大学に現在の状況で行くことができますか?
>>法律学に限らず、勉強は、どういう手段を使ってであれ、できるようになった人が勝ちです。
>>でも学生さんは、自分で分かるようになるまで勉強すればよいし、ロースクールにせよ予備校にせよ、使えるものは何でも使って、自分の能力を高めていくだけのことです。
そのようにおっしゃるのであれば、なぜ法科大学が必要だったんですか?独学であれ、予備校を利用したであれ、大学の授業であれ、大学生から社会人まで自分のペース、それぞれの状況に応じた勉強ができた現行のほうがはるかによかったのでは?
だって、能力が高められるのであれば、方法は何でもいいんですよね。その手段方法を限定したのがローなのでは。
>>ロースクールで勉強を一生懸命やり、それなりの法律知識や法的分析能力、事案処理能力を身につけた学生たちが報われる制度であることこそが必要だ。
このように思われる気持ちの10分の1でもいいので、法科大学にかかわる方たちに現行の受験生の事も考えていただきたいです。だって、皆勉強を一生懸命やってるんですから・・・。
投稿: ロビン | 2004/11/05 12:13