法システムの正当性回復?
こちらのコメント欄に書きたかったけど失敗するので、こちらでちまちまと。
法システムが確固として存在し、逸脱行動にはサンクションを加えて自らの正当性を回復する、その変更は立法を通じて行うというのが一つの建前だが、実際にはそう単純ではない。
前提となる事実関係が代わった結果、死文化した例は枚挙に暇がない。
刑事法だって、例えば堕胎罪、姦通罪の類は、かつて有効だった時代も、ほとんど死文化したと言っていい。
その場合、事実を法に合わせようとする法システムの正当化は、二、三の不幸な被害者はいるかもしれないが、たいてい失敗に終わる。
法自体の修正も、立法に委ねられるというのは、建前としてはその通りだが、判例法や慣習法といった要素は法律自体にもビルトインされているし、解釈による法の変遷は普通のこととして見られる。
民事の例だが、譲渡担保とか仮登記担保とか、これまた枚挙に暇がない。
任意に支払った利息は違法な高利でも返還請求できないという法律、これは今でも有効に残っているが、判例が死文化させた。
立法がそれに揺り戻しをかけたが、判例はさらに任意性や書面性を厳格に解することで立法府の意図を骨抜きにしている。
法律なり法システムなりがそれ自体として確固として存在しているわけではなく、それらが前提とする社会的事実に依存しているというのが正確なところである。
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コメント
私自身が支持している立場ではないので、誤解しているのかもしれません。
ただ、町村先生が法制定の手続を立法に限定される理由がよくわかりません。社会的事実に全面的に法が依拠するなら、殺人や窃盗も頻発しているのに、これらは法的に正当化されないのでしょうか。社会的事実を基礎にするにしても、当然一定のフィルタリングをする過程があり、その正当性が問題になるのではないでしょうか。
投稿: tedie | 2004/10/05 01:20
Tedieさん、私も考えが足らないのできちんと書けませんが、社会的事実のすべてが所与となって法システムを変更するというとおっしゃる殺人窃盗も正当化されてしまいますね。それには規範意識や、法以外のサンクション、そして法執行が日常的に行われていることそれ自体も社会的事実として作用してくるのでしょう。
うーん、こういう風にのばしていくと、私自身の説明も破綻しそうな気がしますが。
投稿: 町村 | 2004/10/05 10:16
弁天小僧様のコメント欄読んでだら、ある程度理解してきたけど、tedie様と町村様の議論がわかりません(T^T)
法システム論がまったく理解できない・・・
投稿: 更紗 | 2004/10/05 13:10
まあそう堅くならずに。
特別のことをいっているわけではないです。
要するに、法律と世の中を支配している法と人々の行動や法意識の関係についてちゃちゃを入れているだけで・・・。
投稿: 町村 | 2004/10/05 16:22