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2004/10/29

opinion新旧司法試験合格者数に関する声明

またまた、ある方面からは百叩きに遭いそうな話だが、宮澤先生が中心になって新司法試験・現行司法試験の人数割合素案に対する反対声明が、首都圏私大教員有志の名で発表された。
メーリングリストに発表された声明文を全文転載しておく。

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新旧司法試験合格者数に関する声明

 最近の新聞報道によると、10月7日の司法試験委員会において、新旧司法試験合
格者数に関する法務省素案が示された。同素案は、2006年度の新旧司法試験の合
格者数を各800名、計1600名にとどめ、2007年度については新1600
名、旧400名とすることなどを内容とするという。しかし、同素案の内容は、新旧
の割合においても合格者総数においても、法科大学院を中心とした法曹養成システム
に切り替えるという制度改革の理念を十分に反映しておらず、法科大学院制度の健全
な発展を損なう危険性の高いものであり、到底賛同できない。

 法科大学院制度の創設を提言した司法制度改革審議会意見書は、法科大学院の教育
について、「その課程を修了した者のうち相当程度(例えば約7〜8割)の者が新司法
試験に合格できるよう、充実した教育を行うべきである。」とした。同提言に応える
べく、全国の法科大学院は、「法曹養成に特化したプロフェッショナル・スクール」
(改革審意見書)に相応しい教育の実践に向けて懸命の努力を払っている。また、学
生達もこれに応え、毎日大量の予習課題をこなし、文字通り寝食を惜しんで学修に取
り組んでいる。法科大学院制度は、その理念に向かって予定通りに船出したのであ
る。そのような中で最も懸念されているのが、新司法試験の在り方、とりわけ合格率
である。
 前記素案をもとにシミュレーションすると、2006年度における新司法試験の合
格率は約34%、2007年度以降は約20%になるという。しかし、これでは、上
記の厳しい学修に才能ある人材を引き付けるには余りにもリスクが大きく、新たな法
曹養成制度の中核と位置付けられた法科大学院制度を崩壊させかねない。
 このことは、法曹志願者の年齢や出身学部にかかわりなく指摘しうる問題である
が、とりわけ、社会人や他学部出身者が法曹を目指して積極的にチャレンジしようと
する気運を大きく損ね、法科大学院志願者の大半は従前通り法学部出身者ともなりか
ねない。そうなれば、「多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れ
るため、法科大学院には学部段階での専門分野を問わず広く受け入れ、また、社会人
等にも広く門戸を開放する必要がある。」(改革審意見書)とした多様性の理念は、
たちまち暗礁に乗り上げることになる。
 のみならず、学生の意識・関心は、法科大学院における地道な学修よりも、新司法
試験における競争のための受験勉強に傾き、法科大学院教育そのものを変質させて、
「点による選抜」から「プロセスとしての法曹養成」への転換(改革審意見書)を企
図した法科大学院制度による教育の理念を根底から揺るがすことになろう。そして、
将来の日本社会が必要とする専門的能力を備えた法曹を養成するために多くの法科大
学院が用意した多様な先端科目・実務科目や留学制度等は、まったく省みられない結
果となるであろう。
 新司法試験の合格率を引き上げるべきであるという主張は、ともすると法科大学院
独自の利益主張のように受け取られるおそれがないではない。しかし、これと同様の
意見は、司法制度改革推進本部の法曹養成検討会、司法改革国民会議、弁護士会その
他さまざまなフォーラムにおいてもすでに表明されているところであり、広く支持を
得つつある。
 そもそも法科大学院は、その設立母体となった各大学の独占物にとどまるものでは
なく、司法制度改革の一環としての公益的な目的を有するものである。各大学は、新
たな時代に望まれる理想の法曹像を目指してカリキュラム等を工夫し、最大限の努力
をもって法科大学院を設立した。これに呼応して、最高裁判所や法務省、弁護士会は
いうに及ばず、さらには有志法曹や企業もが、教員の派遣や研修、学生研修などの面
で、法科大学院の設立および運営のために多大なる協力と貢献をしている。それは、
とりもなおさず、政府・国会によって法科大学院が新たな法曹養成システムの中核に
据えられたことを踏まえ、これへの協力が法曹人口の量的および質的な抜本拡充とい
う公益すなわち国民の利益のために不可欠であるとの認識に立脚してのことであるは
ずである。

 我々は、司法試験委員会がこのたびの法曹養成制度改革の理念を十分に見据え、法
科大学院を法曹養成制度の中核に位置付けてその健全な発展を図る観点から、前記の
素案に追従することなく、法科大学院の課程を修了した者の大半が新司法試験に合格
することをより早期に可能ならしめる方向で合格者数問題を抜本的に検討されるよ
う、強く要望するものである。

 2004年10月28日


法科大学院関係者有志

青野博之(駒澤大学大学院法曹養成研究科長)
淡路剛久(立教大学大学院法務研究科委員長)
伊藤 進(明治大学法科大学院長)
右崎正博(獨協大学大学院法務研究科長)
浦川道太郎(早稲田大学大学院法務研究科長)
大村雅彦(中央大学大学院法務研究科長)
神長 勲(青山学院大学大学院法務研究科長)
京藤哲久(明治学院大学大学院法務職研究科長)
須網隆夫(早稲田大学大学院法務研究科教授)
滝澤 正(上智大学大学院法学研究科法曹養成専攻主任)
野中俊彦(法政大学大学院法務研究科長)
日笠完治(駒澤大学大学院法曹養成研究科法曹養成専攻主任)
平井宜雄(専修大学大学院法務研究科長)
平良木登規男(慶應義塾大学大学院法務研究科長)
福原紀彦(中央大学大学院法務研究科長補佐)
宮澤節生(大宮法科大学院大学副学長)
山田卓生(日本大学大学院法務研究科教授)
  (アイウエオ順)

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コメント

 で、この大学の先生たちは具体的にどうせよと言いたいのですかね。新司法試験の合格率が低くて三振法務博士が大量に輩出されたとしても、それは新司法試験合格者数を法科大学院の総定員の7〜8割にしなかった法務省の責任であって、法科大学院関係者は一つも悪くないってことが言いたいのですかね。
 2006年度に限定すれば、いきなり現行司法試験枠を0人にして、和光の研修所の物理的収容人数ぎりぎりいっぱいに新司法試験合格枠を増員すればあるいは法科大学院卒業者の7〜8割は新司法試験に合格できるようになるかもしれませんが、その手法は2007年度には崩壊するわけですし。


投稿: 小倉 | 2004/10/29 00:57

声明の以下の部分にコメントします。
(引用開始)
前記素案をもとにシミュレーションすると、2006年度における新司法試験の合格率は約34%、2007年度以降は約20%になるという。しかし、これでは、上記の厳しい学修に才能ある人材を引き付けるには余りにもリスクが大きく、新たな法曹養成制度の中核と位置付けられた法科大学院制度を崩壊させかねない。
(引用終了)
ここの部分の意味が半分程度しかわかりません。有能な人が来なければシステムが思ったほどに機能しなくなることはわかります。しかしその前提部分がピンとこないのです。
従来は、合格率の低さも試験に挑戦したいという気持ちにさせる要因の一つではなかったかと思います。
もとは寝食を惜しんで勉強してなお合格できない(2から3%の合格率ではなかったでしょうか?)試験であったと記憶しています。それでもなお、引きつけるものがあったのではないでしょうか。それとも もともと有能な人はリスキーな試験には挑戦せず、安穏と別の道を選んできているとの前提があるのでしょうか。それならそれでわかります。しかし、低い合格率の中でも、「有能」な人は軽く司法試験程度には大学在学中に受かってきていたのではないでしょうか。
新制度のもとでは、「法曹」という職は、合格率があがってもなお、有能な人材を引きつける魅力はなくなってしまったのでしょうか。

投稿: 伊豆 隆義 | 2004/10/30 11:03

 単純に言うと、法曹になることに挑戦するための時間的、金銭的コストが、法科大学院制度の導入により飛躍的にあがってしまったということが最大の原因でしょうね。
 「在学中に挑戦して、だめなら就職しよう」ということが許されなくなり、新司法試験を受験するには新卒で大企業に就職するというカードを放棄しなければいけなくなりましたし、社会人ならば、一旦今までのキャリアを中断して法科大学院に入り直すところから始めなければいけなくなりましたし。

投稿: 小倉 | 2004/10/30 16:08

伊豆先生、私がお答えするのもなんですが・・・
おっしゃるとおり、優秀な人はもちろんこれまでも受けてきたでしょうが、あまりにリスクが高ければ、他の道を選ぶ割合が高くなります。それはまあ事実なんじゃないでしょうか。

投稿: 町村 | 2004/10/30 16:15

成功しなかった場合のダメージが大きければ、成功する確率が高くなっても、挑戦しにくくなるというのは、世の常ですからね。

例えば、仮に、「ロシアンルーレットをやって死ななかったら法曹資格を与える」ということにした場合、成功確率は8割を超えることになる可能性があるわけですが、でも、成功しなかった場合のダメージが大きすぎるので、普通の人は挑戦しなくなるでしょうね。

投稿: 小倉 | 2004/10/30 17:04

なるほど、ここでいうリスクは人生というリソースの喪失可能性な訳ですね。そうすると、卒業後の合格率が低い法科大学院制度は今まで以上に悪い制度ということになる。時間とお金を掛けざるを得ないにもかかわらず合格の可能性が低いとなれば、人生を掛けてみるには心許ない。
でも、そうなる原因が合格率だとしたら、ここまで分母を大きくした法科大学院が1番の責任者だし、分母が大きいことが秘密にされていた訳でもないのに、今になって合格率が低いことに悩む入学生というのは変な話です。この程度のことが分からずに(恐らく分かっていたけど目をつぶっていた)、教育者や学生に期待はできそうもない。将来にわたって400~500人のバイパス枠を確保するのが、1番必要なことだと思います。

投稿: yamanae | 2004/10/30 17:20

それはそうでしょう。成功の確率というだけでなく、失うものの大きさは人を萎縮させますから。

投稿: 町村 | 2004/10/30 17:21

そうなる原因は合格率というよりも、専門職大学院としてしまったことですね。3年でなんとかなるのならば、「ロースクール」を学部の方に持って行って、所定の単位を取り終えたら4年次に新司法試験を受けることができるというシステムにしておけば、1留くらいで転身できるのに。

投稿: 小倉 | 2004/10/30 18:49

専門職大学院としてしまった以上、改善しか方策がないとしたら、私はやはりバイパスを残すことが次善の策だと思います。法学部のないようなアメリカの制度を持ち込んだ責任は誰が取るのかと考えない訳でもないけど、今さら言ってもせんないし、、、
貧しい(というほどでもなく、普通の家庭の子女)であっても、意欲と能力がある人間は、バイパスで勝負すればいいし、法科大学院に流れる人間もいる訳だから、300人の枠があれば、昔の500人時代の難易度じゃないでしょうか?400~500人の枠なら法科大学院の合格者がなくても、現状の司法制度なら人材は不足しないでしょう。これプラス法科大学院から有用な人材が1000人もいれば、守備範囲が拡がっても、ここ10年は大丈夫だと思います。法科大学院の残る1500人には、今の想定外の業務を開拓してもらうほかありません。
そう言えば、件の有志の先生方は、7~8割合格させてしまった後、仕事の世話までしてくれるのでしょうか。10年後も、、

投稿: yamane | 2004/10/30 19:28

小倉さんの主張のように学部として、年齢リスクを低くする方式(それ自体よい考えとは思います)によらないとして、今のまま、制度がかわらないとして、宮澤教授たちがいうような、崩壊しかねない問題なのかなんです。

ロースクール3年と司法試験受験3年で計6年の勉強というのは、人生にとり、そんなに無駄なのかどうか。
いや 早く社会に出てもらった方が良いというのは正論ですが、人生の無駄としてそのような道を選ばなくなってしまうものですか。

従来も大学卒業後6年勉強して、試験合格できず、法曹をあきらめた人というのは、いくらでもいたように思うのですが。

それよりは、「法科大学院卒」の「資格」は得られるのでしょうから、はるかにリスクは低いのではないでしょうか。

今時読む人もいないと思いますが、石川達三「青春の蹉跌」の登場人物の小野清一郎氏に比べれば、ロースクール卒業生は遙かに恵まれているように思いますが。小野清一郎氏と対比することはおかしいでしょうか。

ほとんど刑事事件をやらない私も何年かに一回くらい刑事否認事件を受任することがありますが、無罪率なんて、1%前後しかないですよ(たぶん。統計をみてませんので。)。

ロースクールでは、国選で否認事件を担当したら「無罪率低いので否認はやめなさい」という指導をするような、「弁護士」を育てるんでしょうか。

宮澤先生たちの考え方は、「勉強に対する投資額に見合うだけの利回り」をロースクールの学生に保障したいような発想のように思われます。しかし、それで良い法曹が出てきますか?優秀な人が集まりますか?


投稿: 伊豆 隆義 | 2004/10/31 21:36

 逆に、法科大学院卒業者の7〜8割が新司法試験に合格するように新司法試験の合格者数を増やしさえすれば、その後の司法修習修了者の2〜3割しか法律事務所に採用されず、それ以外の7〜8割は法律実務家としてスタートを歩むことを断念するかいきなり開業というリスクを負うかという選択を迫られるという事態、あるいは運良く法律事務所に採用された2〜3割にしても劣悪な労働条件を甘受しなければならないという事態に陥ったときに、優秀な人材が集まると考えているのだろうかという疑問もあります。
 法科大学院関係者は、法科大学院の学生が新司法試験にさえ合格してくれればその先のことは一切関係ないと決め込むつもりなんだと思いますが、新司法試験の合格率が低いと法科大学院行きを断念してしまうであろう「合理的な人々」は、修習終了後の処遇が悪ければやはり法科大学院行きを断念するのではないかと思うのですけどね。

投稿: 小倉 | 2004/11/01 01:36

久しぶりにこの宣言をみて、署名している先生達の思いを慮ってみましたw

青野博之(駒澤大学大学院法曹養成研究科長)
必死の訴え
淡路剛久(立教大学大学院法務研究科委員長)
 本音デス
伊藤 進(明治大学法科大学院長)
 本音デス
右崎正博(獨協大学大学院法務研究科長)
 本音デス
浦川道太郎(早稲田大学大学院法務研究科長)
 本音デス
大村雅彦(中央大学大学院法務研究科長)
 おつき合い
神長 勲(青山学院大学大学院法務研究科長)
 本音デス
京藤哲久(明治学院大学大学院法務職研究科長)
 本音デス
須網隆夫(早稲田大学大学院法務研究科教授)
 本音デス
滝澤 正(上智大学大学院法学研究科法曹養成専攻主任)
 必死の思い
野中俊彦(法政大学大学院法務研究科長)
 本音デス
日笠完治(駒澤大学大学院法曹養成研究科法曹養成専攻主任)
 必死の思い
平井宜雄(専修大学大学院法務研究科長)
 必死の思い
平良木登規男(慶應義塾大学大学院法務研究科長)
 おつき合い
福原紀彦(中央大学大学院法務研究科長補佐)
 おつき合い
宮澤節生(大宮法科大学院大学副学長)
 おつき合い
山田卓生(日本大学大学院法務研究科教授)
 本音デス

投稿: 敢えて匿名 | 2006/09/22 16:48

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