大学入試センターがLS適性試験から撤退
法科大学院協会のニュースレター第4号によれば、8月28日の臨時理事会と、これに先立つ常務委員会にて、文科省担当者が、大学入試センターの調査研究として行ってきたロースクール適性試験を、法改正により大学入試センターの本来業務に据えることは不可能になったし、調査研究として継続するのも難しいという報告をした。
報告の要点を引用すると、
「従来、大学入試センターは、『独立行政法人大学入試センター法』の12条1項2号に基づき、『大学入学者選抜方法の改善に関する調査及び研究』の一環として、適性試験を実施してきた。このことについては当初、法改正を行い本来業務とすることとしていた。しかし、政府の『経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(平成16年6月3日 閣議決定)』において示された、『独立行政法人の組織・業務全般の整理縮小、民営化等の検討を求める』という方針と、それに関して『平成16年中に結論を得る』ように求められていることにより、独立行政法人大学入試センターの第1期の中期目標期間が平成17年度末で終了することに伴い、現在その業務内容の見直しが進められており、法改正を行うことは困難になった。また、調査・研究として現在のような形式、規模で適性試験の実施を続けていくことも困難であり、総務省等とも意見交換を行いながら、9月早々には大学入試センターの取扱いに関する文科省としての方針を示すことを迫られている。現在、文科省としては、『調査・研究については段階的に縮小する』こと、及び、適性試験は法科大学院入試の一部を構成するものであることから、『 法科大学院の関係団体が適性試験の実施主体となる』という二つの基本方針を示すこととしている。これにより、将来的には大学入試センター以外の実施主体により実施することも考えられる。
要するに、大学入試センターが実施主体としての責任をもってロースクールの適性試験を行うことは、これまでも「調査研究」といういわば実験段階としてかろうじて認められてきたに過ぎず、これを独立行政法人の本来的業務にするという方向での法改正はできないというわけである。
ま、当然といえば当然であり、本来独立行政法人なるものの存在が許されているのは民間でできないことをやるためなのだから、日弁連法務研究財団という民間財団法人が行っていることに独立行政法人が出てくるのは筋違いであった。
まして、調査研究という便法でやって来たことは、法科大学院の立ち上げ時期の特殊な状況下では正当化できるが、まあ、もう十分である。
これまで調査研究としてやって来た成果は、試験の内容と成績データや作題のノウハウなどについて、速やかに民間の実施団体に引き渡し、民間実施団体の活動をより支援することこそ独立行政法人の本来のあり方である。
しかしながら、法科大学院協会の中には、大学入試センターにこれまで通り試験実施を続けてほしいという意向もあるようである。
理事会の結論として示されているところを要約すると、以下の通りである。
1. これまで実施されてきた、質、規模、方式の信頼性ある適性試験のシステムを継続、維持していくことが不可欠である。
2. 大学入試センター適性試験を実質的に継続・維持できるようにその方策を早急に検討する。
あくまで大学入試センターの試験を維持したいという理由は、明らかではない。適性試験システムが不可欠であることは、公平性・多様性・開放性を維持する限り否定しがたいが、日弁連法務研究財団が実施している試験が継続する以上、大学入試センターの試験がなくても困らないのである。
そして、これまでは適性試験の実施に責任を持つことをしてこなかった法科大学院協会であるが、今後は法科大学院協会として適性試験の実施・内容に「新たに」関与したいということであれば、日弁連法務研究財団との協力関係を探ればよい。
ただ、法科大学院協会として適性試験に余計な労力を費やすよりも、教育方法・内容面の向上とか、新司法試験のあり方を検討するとか、やるべきことは山積しているはずなのだが。
(追記:現在の調査研究として行われる適性試験は、来年度までであり、さしあたり2006年度入試に用いられる2005年春の適性試験は行われる。2007年度入試に用いられる適性試験について、DNC撤退後のあり方が不透明になっている。来年度受験予定の方にはまだ影響がないので、誤解なきよう)
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