判タ・コメント欄の誤り
判例タイムズ1152号131頁に、WinMXに関する発信者情報開示請求事件控訴審判決が掲載されていた。
最近この種の事件をフォローしていないこともあって、判例雑誌に載って初めて知ったのだが、コメント欄にはさらに金融商事判例という雑誌に二件の発信者情報開示請求事件判決が掲載されていることが紹介されていた。
東京地判平成15年4月12日金判1168号8頁
東京地判平成15年11月28日金判1183号51頁
ところが、前者は、判決年月日が間違っている上に、その号には二件の発信者情報開示請求事件判決が掲載されているのだが、コメント欄ではそのことに触れられていない。
些細なミスではあるが、判タ・判時のコメント欄は信用力が高いので、出来の悪い研究者などはこれを引き写して原典に当たらないまま論文に書いたりする者もいる。罪作りなミスである。
今まで学生・院生には口を酸っぱくして、「コメント欄や論文の引用を孫引きするんじゃありません、現物を調べてから引用しなさい」と言ってきたが、その格好の例である。
また、この点では某社のオンラインデータベースも不完全であり、上記金融商事判例1168号掲載の判決の一つがデータベースに載っていないという問題がある。
法情報の整備は、格好だけそろっていても、内容的正確性・完全性はまだまだである。
(追記)
間違いを指摘するなら正しい情報を教えろという声が点から響いてきたので・・・。
上記の1168号に掲載されているのは次の二つ
東京地判平成15年3月31日金判1168号8頁(メディカルドラフト対ヤフー事件)
東京地判平成15年4月24日金判1168号8頁(羽田タートルサービス対So-net事件)
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コメント
ほとんどの判決が未公開ですから、民事も刑事も判決書の原典に当たるのは、難しいですよね。
しかし、判決書を集めて分類するといろいろ判ります。
投稿: 奥村(大阪弁護士会) | 2004/09/03 19:49
あ、原典とはいっても、なにも裁判所に行って閲覧しろという意味ではなく、せめて判例集くらいみなさい、という意味です。
投稿: 町村泰貴 | 2004/09/03 20:00