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2004/09/16

職場のサイバー監視

砂押以久子「職場のサイバー・サーベイランスと労働者のプライバシー保護」立教法学65号317頁

 職場のパソコンから労働者がインターネットの私的利用をしている場合に、使用者はこれを電子的に監視して禁止すること、私的利用には懲戒処分を課して良いか、という問題がある。
 これについて砂押氏は、フランスの法状況、特に破毀院社会部2001年10月2日判決をもとに、考える方向性を指し示している。

 この破毀院判決は、労働者が職場においても「私生活の内面」の尊重を求める権利を有し、通信の秘密も保護されるので、労働者の私的電子メールを使用者が無断で開封することはそれ自体が労働者の通信の秘密を犯す違法な行為であると判断した。
 これは、必ずしも無制限の自由を労働者に保障したものではなく、事前に予告され、合理的な範囲での監視は許される余地があるが、その許否の境目は微妙なものとなる。

 日本法においてもこうした方向性を明確にしていくべきだというのが砂押氏の主張である。

 このケースにおいても、ネットワークやデジタル情報は事態を増幅させ問題状況を先鋭化させる役割を演じている。
 労働者が職場の備品や電話を私用に用いることというのは、従来から禁止されてきた。しかしとはいえ、一定の範囲では許されるというのが暗黙の了解であった。もちろんその線引きは、職場によっても、また上司の個性によっても異なるだろうが、勤務時間中一切の私的行為を禁止しても不可能を要求するようなものである。
 そのような暗黙の了解が、インターネットやデジタル環境となると途端に余裕のないギスギスした規制関係になっていく傾向がある。
 もちろんそれにはわけがあって、情報の財としての価値が高まっていることや、情報漏れによる被害が大きくなってきていること、ネットワークによる情報リスクが高まっていることから、スタンドアローンよりもやかましくいわざるをえないことなどである。加えて、徹底した監視も技術的に容易になっていることが挙げられる。
 しかし、そうした事情を考慮しても、なお、労働者のプライバシーがないがしろにされて良いという結論に直ちになるわけではない。

 情報リスクが高まっているといっても、それは部署によりグレードを付けることが可能である。真に重要な秘密に触れる人は、高度な監視を受けることもやむを得ないが、そうでない社員が高度な監視を受けることは正当化されない。そのあたりの配慮をないがしろにする傾向が見られるとすれば、それは、もっとよく考えてみる必要がある。

 そのような再考の必要は、規制と自由とが先鋭的に対立している他の分野でも同様に認められるのである。

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