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2004/09/28

ecom勉強会resume

今日はecom勉強会。場所などは24日の案内参照。

テーマはプロバイダ責任制限法と名誉毀損・誹謗中傷。
改めて振り返ってみると、少し熟成中なのかもしれない。

1.プロバイダ責任をめぐる現在の問題
  (1) 侵害形態
  名誉毀損・誹謗中傷、プライバシー侵害
  個人情報の流出
  著作権侵害

  (2) 侵害に用いられるツール
  ウェブページ、プログ
  電子掲示板
  P2P
  電子メール・メーリングリスト

2. プロバイダ責任制限法の構造
  (1) プロバイダが削除しなかった場合の免責(3条1項)
→送信防止措置が技術的に不可能な場合
→または可能な場合で、情報流通による他人の権利侵害を知らず、知ることができたと認めるに足りる相当の理由もない場合
(→そもそも問題の情報流通を知らなかった場合)
これら以外は、削除義務違反があったかどうかを判断して、不法行為責任が問われる。

  (2) プロバイダが削除した場合の免責(3条2項)
→必要な限度の送信防止措置で、かつ、他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があった場合
→または、必要な限度の送信防止措置で、かつ、被害者から侵害情報等を示して送信防止を求められ、その同意の有無を送信者に照会し、7日以内に不同意の返事が来なかった場合
これら以外は送信防止措置により発信者が被った損害を、不法行為または債務不履行の要件に照らして賠償する義務が生じる可能性がある。

  (3) 発信者情報開示請求(4条)
→開示関係役務提供者に対して、権利侵害の明白性と開示の正当理由とを明らかにして開示請求
→発信者の意見聴取
開示しないことによる損害には、故意・重過失がない限り免責される。

3. プロバイダに対する削除請求と削除義務違反による賠償請求
(プロバイダ責任制限法以前)
・東京地判平成9年5月26日判時1610号22頁(ニフティ現代思想フォーラム事件第1審判決)
・東京高判平成13年9月5日判タ1088号94頁(同控訴審判決)
・東京地判平成11年9月24日判時1707号139頁(都立大事件)
(プロバイダ責任制限法成立後)
・東京地判平成14年6月26日判タ1110号92頁(動物病院対2ちゃんねる事件第1審判決)
・東京高判平成14年12月25日判時1816号52頁(動物病院対2ちゃんねる事件控訴審判決)
・東京地判平成15年6月25日(女性プロ麻雀士対2ちゃんねる事件)
・(日本生命対2ちゃんねる仮処分事件)
・東京地判平成15年7月17日(DHC対2ちゃんねる事件)

4. 発信者情報の開示請求
  (1) そもそも発信者情報とは?

<掲示板のログの例>
タイトル:リニューアル 投稿者:町村泰貴
 投稿日: 5月 1日(土)19時09分58秒
Remote Host: jcache.ic.nanzan-u.ac.jp,Time:1083438598 ←この部分非公開

<ブログコメントの例>
コメントの内容  コメント先  日付
IPアドレス   ライター
法曹志望さん、コメントを Lawschool実務家教員の感想について  2004.09.27
2**.1.1**.235   町村

<メールアドレスから契約者情報を求める場合>
 契約者住所 : 東京都新宿区新宿○-○-○
 契約者氏名 : 新宿 太郎

<アクセスログ>
 2004/11/06 00:08:12 ABC00112233 10345 203.122.10.83

  (2)発信者情報開示をめぐる現在の問題点
a.発信者情報開示を受けたプロバイダが判断しなければならない事項
 法4条の要件を充足しているかどうか
cf. 東京地判平成13年8月27日(ニフティFBOOK事件)
 →名誉毀損の成立を否定し、開示請求を棄却した事例。ただしプロバイダ責任制限法以前の例。
・東京地判平成16年4月25日(GLA対調布ケーブルテレビ事件)
  GLAをカルト宗教とする書き込み多数
・東京地判平成16年5月11日(フジオーネ・テクノ・ソリューションズ対2ちゃんねる事件)
b.発信者情報を求めることのできるプロバイダの範囲
 アクセスプロバイダ(経由プロバイダ、接続プロバイダなどともいう)は特定電気通信役務提供者(開示関係役務提供者)といえるか?
・東京地判平成15年4月12日金判1168号8頁(羽田タートル対ソネット事件第1審判決)
・東京地判平成15年9月12日(WinMX・パワードコム事件)
・東京地判平成15年9月17日(羽田タートル代理人対DDIポケット事件第1審判決)
・東京地判平成15年11月28日金判1183号51頁(なりすまし被害者対ソネット事件)
・東京地判平成16年1月14日判タ1152号134頁(WinMX・ソネット事件第1審判決)
・東京高判平成16年1月29日(羽田タートル代理人対DDIポケット事件控訴審判決)
・東京高判平成16年5月26日判タ1152号131頁(WinMX・ソネット事件控訴審判決)

c.発信者情報開示請求の管轄
 発信者情報開示請求訴訟の管轄は、被告(プロバイダ)所在地か、原告(開示請求権者)の住所地か?
 大分地決平成14年10月17日(判例集未登載)
  傍論ながら、財産権上の請求として義務履行地たる原告住所地に管轄を認めた。

4.終局判決によらない開示の可能性
 (1) 仮処分
 東京地決平成16年4月9日(寺沢有ほか対2ちゃんねる仮処分事件・判例集未登載)
  仮処分により開示を命じた事例(本訴判決は東京地判平成16年5月7日)

 (2)裁判上の和解・裁判外の和解
 羽田タートル代理人対DDIポケット事件では、羽田タートルサービスと2ちゃんねるとの間で仮処分手続があり、そこで和解して発信者情報を開示されたことがうかがわれる。

 眼科医対Yahoo!事件(東京地判平成15年3月31日判時1817号84頁)では、発信者の同意を得て、事実上発信者の住所氏名等の情報を任意に開示している。

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コメント

 プロバイダーの刑事責任については、東京高裁(児童ポルノ掲示板)によれば、管理者に未必の故意がある場合、端的に掲示板管理者を名誉毀損罪・信用毀損罪の正犯として処罰できる。また、投稿者よりも責任が重いそうです。
 この判例が正しいならば、プロバイダー責任制限法で開示請求するよりも、プロバイダーを刑事告訴するのが手っとり早いと思います。

投稿: 奥村(大阪弁護士会) | 2004/09/28 12:08

御指摘ありがとうございます。
刑事責任はプロバイダ責任制限法の範囲外であるため今回は取り上げませんが、無視しているわけではありません。

投稿: 町村 | 2004/09/28 12:42

 プロバイダ責任制限法3条1項の関係では、著作権法の規律の観点から利用主体と認められる者は、プロバイダ責任制限法における「発信者」に該当するから、同法3条1項による免責を受けられないとしたファイルローグ事件中間判決は欠かせないところです。

 田村説とかは、差止請求権の関係でレンタルサーバの提供者を送信可能化等の主体とあっさり認めてしまいますので、田村説と飯村説とが組み合わさると、レンタルサーバ等は免責されないということになります(しかも、登録時に利用者に戸籍上の氏名と住民票上の住所を正しく入力させないと、それで過失認定されてしまうわけですし。)

投稿: 小倉秀夫 | 2004/09/29 00:43

 私が代理人を担当した2ちゃんねるの事件(寺沢有ほか対2ちゃんねる仮処分事件等)をご照会いただき、ありがとうございました(ついでにリンクもありがとうございます)。

 ちなみには、この件では、間接強制も認められています(東京地裁平成16年(ヲ)第80082号・鬼澤友直裁判官)。その効果があったのか、2ちゃんねるから、発信者情報は(ごく)一部開示され、現在、発言者が会員だったISPに対する発信者情報開示を進めているところです。ご参考までに。

投稿: ビートニクス | 2004/09/29 02:43

小倉さん、ご指摘ありがとうございます。

投稿: 町村 | 2004/09/30 18:15

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