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2004/07/21

冷凍精子から生まれた子の認知請求

高松高判平成16年7月16日(平成15年(ネ)497号)は、新聞報道などで有名になったように、夫の生前に採取した冷凍精子によって、夫の死後に懐胎した母から生まれた子の、亡父に対する認知請求を認めた。

高松高裁の論理は、まず一般論として次のように述べる。
「認知請求が認められるための要件は,自然懐胎による場合には,子と事実上の父との間に自然血縁的な親子関係が存することのみで足りると解される。しかしながら,人工受精の方法による懐胎の場合において,認知請求が認められるためには,認知を認めることを不相当とする特段の事情が存しない限り,子と事実上の父との間に自然血縁的な親子関係が存在することに加えて,事実上の父の当該懐胎についての同意が存することという要件を充足することが必要であり,かつ,それで十分であると解するのが相当である。」

その上で、以下のように判示した。
生殖補助医療を想定していない認知制度の下でも人工授精等により出生した子を排除するものではない。
懐胎時に父が生存していることは認知の要件でない。
ただし自然懐胎には父の意思が介在するのに、死後の保存精子による懐胎は父の意思に反することもあるので、父の同意を要件とすべきである。
3年の死後認知期間との関係でも不平等とはいえない。

以上の論理について、今更ながら、法的親子関係は血縁による親子関係と概念として異なるということを強く感じる。本件は冷凍保存された精子を介して血縁関係がある父子に認知が認められたわけだが、高松高裁の論理によっても、冷凍保存精子が死後に使われることに父が生前同意を与えていなければ、血縁関係があるにもかかわらず父子関係は認められないと言うことになる。
本件事案では、父は、冷凍保存する際の同意書に、父が死亡したら冷凍精子は廃棄するとの条項があったにもかかわらず、妻にも両親にも、自分が死んだら保存精子で子供を作ってくれと頼んでおり、これが本判決の言う同意と評価された。
微妙な事案ではあるが、少なくとも私の常識には合致する判断である。

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