消費者団体訴権の制定に向けて、内閣府の小委員会が活動している。
消費者の窓というサイトで逐次資料などが発表されるが、ニュースによれば、今回は消費者団体などにヒアリングがなされ、日弁連は次のように述べたそうだ。
「消費者基金」を設立し、不当な利益を得た事業者に損害賠償金を支払わせる制度をつくるよう提案。さらに、基金に集まった資金は消費者団体の訴訟費用などに充当すべきだとした上で、企業と消費者が結んだ約款の不当条項や、不当な勧誘を差し止める必要性も訴えた。(2004- 7- 2共同)
ところでその同じ日には、次のようなニュースがでている。
イデアル製薬という会社が、昨年11月から12月にかけて、健康食品「エス・スタイル」(1セット1万2800円)を紹介するチラシ2020万枚を配布し、その中ではスチュワーデスと称する女性らの「自分に甘い私にも簡単にダイエットできた」「満足度100パーセントのダイエットに成功」などと体験談を載せて、昨年12月から今年3月にかけ約1億7700万円を売り上げたという。
公正取引委員会の報道発表に詳細がある。
問題は、このような詐欺まがいの商法によりかき集めた利得は、全額プラス取り立てのための弁護士費用プラス慰謝料とともに、購入した消費者に返させるべきであるにもかかわらず、そのための実効的な手続がないということだ。
アメリカであれば、クラスアクションにより、被害を受けた消費者が除外を申し出ない限り、クラス代表者が全消費者のために賠償請求訴訟を提起し、返還を求められる。その上に懲罰賠償ということにもなるのだが、それはさておいて、イデアル製薬のような会社に対して、不当な広告で得た「売り上げ」(利益ではない)を全額返還請求できるクラスアクションのような制度があることが、正義に適うことには異論がないだろう。
そこで日本では、クラスアクションにアレルギーが強いので、大陸法型ともいうべき団体訴権を導入するべく作業が進んでいる。そして差し止め訴訟は導入しそうな感じがあるのだが、消費者の受けた損害を団体が訴訟で賠償請求するために制度は、どうも二の足を踏んでいるようである。
これでは結局、イデアル製薬のような会社は野放しとなる。
もちろん公正取引委員会は課徴金を取り立てることになるだろうが、誇大広告で詐欺まがいの利益を上げている起業がすべて公正取引委員会で制裁され、利益を剥奪されているわけではない。要するに公取だけでは不十分なのだ。
従ってこのような場合には、消費者団体が、少なくともその構成員のために、団体訴権として損害賠償を請求できる制度の導入が必要である。
ネックとなっているのは、団体が請求した損害賠償請求権を、その本来の権利者である消費者にどう分配するかで、加えてクラスアクションのような制度にしてしまうとどうしても判決効や手続保障の面でネックが生じる。
日弁連の案では消費者基金を創設することにして分配の手間は省いているのだが、それでも消費者個人の有する損害賠償請求権を団体が行使するのであれば、判決効・手続保障が問題とならざるを得ない。
これを克服するには、賠償請求の主体となる消費者を、少なくとも口頭弁論終結時までには確定する必要があり、そうすると団体訴権を認めるメリットは大幅にそがれるとされる。
しかし、それでも団体がイニシアティブを取ってイデアル製薬のような企業から利益をはき出させる途があるということは大きなメリットである。
是非とも、損害賠償請求の可能な団体訴権制度の実現を望むものである。