謝罪広告は憲法19条にも21条にも違反しない
最高裁平成16年7月15日は、謝罪広告が憲法違反だという上告に対して、次のように述べた。
「所論は,憲法19条,21条違反をいうが,謝罪広告を掲載することを命ずる判決は,その広告の内容が単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものである場合には,憲法19条に違反しないことは当裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和28年(オ)第1241号同31年7月4日大法廷判決・民集10巻7号785頁),また,上記の程度の謝罪広告を命ずる判決が憲法21条に違反しないことは,上記大法廷判決の趣旨に徴して明らかである(最高裁昭和39年(テ)第35号同41年4月21日第一小法廷判決・裁判集民事83号269頁参照)。
原判決が掲載を命じた謝罪広告は,単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のものであることが明らかである。論旨は採用することができない。」
憲法19条とは、思想信条の自由であり、これは判決文でも引用されているように先例がある。
今回の判決は、憲法21条の表現の自由に謝罪広告を命じることが侵害となるかどうかが問題となった。
上記の判決文では、ほとんど理由らしい理由が書かれていない。従って、その実質的な根拠や、「単に事態の真相を告白し陳謝の意を表明するにとどまる程度のもの」を越えて思想信条の自由や表現の自由の侵害となるような謝罪広告があるのかどうか、あるとしてどういう場合がそうなるのかは、この判決から明らかにならない。
憲法学者の仕事である。
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コメント
私も、NBLを読んで、先生と同様の感想を持ちました。
投稿: 落合(東京弁護士会) | 2004/07/21 09:29
落合先生、コメントありがとうございます。
これは一つ前のエントリに対するコメントですね。
今後ともよろしくお願いします。
投稿: 町村泰貴 | 2004/07/21 19:08