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2004/06/05

Winny開発者支援の今後

47氏逮捕の報から約一月、2chのダウンロード板の特にいわゆる寄付スレを中心に、47氏の弁護士費用をみんな
で出し合おうということで盛り上がってきた。
あっという間にスレッドが消化されてしまうのでリンクを張っても新聞記事に張るようなものだが、一応、47氏の弁護士費用を寄付するスレPart40を張っておく。

そのスレッド参加者だけではないと思うが、この弁護士費用寄付は最終的に1600万円も集まり、例外的に高いらしい保釈金も軽々と支出でき、所期の目的を見事に果たした。
個人的には正当な弁護士報酬もそこから支払われる姿をみたい(弁護士はボランティアではない)が、それはまた別の話。

このことはもっと注目されてよいと思う。とかく2ちゃんねるというと誹謗中傷の巣窟としかイメージされず、そういう報道しかなされていない。また実際にも、寄付スレでさえ、誹謗中傷の荒らしが吹き荒れているのだが、それをものともせずに47氏逮捕に抗議したい人たちの前線基地として立派に機能したといえよう。
子供の暴発のせいで、またまたネットワークに対する迷惑なネガティブキャンペーンに火がついているが、匿名掲示板で直接氏名を晒すことなく発言している人たちが、普通の人間だということを忘れないでほしいものだ。

それはともかく、47氏が無事保釈になり、寄付の受け入れ役を引き受けて下さった壇弁護士が口座を閉じて47氏に引き渡した現在、支援の方向性が急に見えなくなって、どうすればよいか分からない状態に陥っている(ように見える)。

もともと、47氏逮捕に反発して支援を寄付という形で行ってきた人々の中には、47氏個人の救援を目的にした人から、個人的知り合いではなく、ネット技術者一般の危機と受け止めた人、あるいは自由なネットの危機と受け止めた人、著作権プロライトの暴力と受け止めた人、幇助の拡大解釈しすぎで危機感を覚えた人など、色々な問題意識があった。人により力点は様々だろう。
そういう様々な関心が、47氏の逮捕に抗議して弁護士費用を寄付するという一点に引きつけられた結果が1600万円なのだ。
振込で参加できる寄付という手軽さも、またその成果が金額となってリアルに示される達成感も、人を引きつける原因だった。

寄付という形の支援活動は成功したのだが、47氏の拘束が解けた段階では、事情が異なる。
本人が受け入れを拒否しないという意思が示されなければ、47氏に引き渡して使途などをすべて一任するという形での寄付は続けられない。
#本当は拘束中でも同様だったのだが、急を要するので目をつぶったというのが本当のところだ。

今上記のスレッド(全部読めていないが)その他で、今後の方向性も議論されている。

例えば、署名を集めるということ。
47氏が逮捕された時点では、その釈放を求めて、ということで署名も考えやすかったが、一応保釈され、公判がはじまろうという段階では、目的が見えにくくなっているように思う。あくまで無罪判決を目指す以上、寛大な判決などは求める必要がない。
幇助概念の拡張解釈に抗議する意思表示であれば、意味があるだろう。実際の法執行機関である警察・検察に対する抗議の意思を示して、今後はこのような無茶な刑事立件がなされないように求めるというのも一つの方法だ。
幇助概念の無茶な拡張に歯止めがなくなれば、罪刑法定主義もへったくれもなくなり、表現行為や学問研究活動に対する萎縮効果は計り知れない。
が、しかし、それは47氏に対する支援とは一歩退いた活動だ。

金子勇氏を支援する会を中心にして、寄付を再開すること。
実際、弁護士費用に限らず訴訟追行にかかる費用も考えると、金銭的な支援の継続は必要だと思う。47氏自身より、支援団体が中心になって呼びかけて管理するのが普通だ。
そのためには、使途をもう少し明確にする必要があろう。弁護士さんの旅費日当など実費もどれほどかさむか分からないし、弁護士費用や訴訟追行の費用で消えてしまうかもしれないが、それ以外にもやれることは色々ある。
例えば側面支援活動として海外のP2Pソフトの作者や関係者を招いての国際シンポジウムを企画するとかだ。そのように使途を示すことで、47氏個人の問題から広がっていくことも考えられる。

ただ、税金などやっかいそうだし、寄付によりNPOみたいなものを設立したり、その目的を設定したりすることを考えると、なかなか一筋縄ではいかないかもしれない。

緊急シンポジウムのように、Winnyを契機として著作権のあり方を考えるということも、大事な活動だ。日本法だけでは済まない話なので、考えた内容はきちんと海外に発信していくことも有効だろう。

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コメント

早速2ちゃんねるで指摘を受けたので一部修正しました。
内心ちょっとひっかかっていたもので。

迷惑なのは加害者の子供ではなく、子供の暴発という事件がネットに原因あり→インターネットは規律が必要→検閲正当化という流れになりそうなところ。

ま、大人だってネットでイヤなこと書かれりゃカッとして裁判沙汰起こしちゃったりするわけですが。

投稿: 町村 | 2004/06/05 17:00

新井です。
支援金の今後については現在、鋭意検討中です。これ以上の寄付をあつめても多額の贈与税が発生すると思われます。任意団体・NPO法人等、新しい枠組みを考えなくてはなりません。

落ち着いたところで金子さんと相談しなくてはなりません。ただ公判の行方などもあり、連絡には慎重を期する必要があり、なかなか事を進めづらいのが現状です。

今後の展開では、町村先生にご協力いただくこともより多くなるかもしれませんが、どうぞ宜しくお願いします。

投稿: arai | 2004/06/05 17:04

新井さん、こちらこそ宜しく。
頑張って下さい。

投稿: 町村 | 2004/06/05 17:12

みんながんがれ

投稿: また京都県警か! | 2004/06/06 00:08

寄付させて頂いたものですが、匿名で失礼します。

一つの事件を契機として、匿名の人たちがネットを通じで
いろいろ考え、行動を実際起こしたというのは、
ゴミオフ?含めて、無視できない
社会的なコミュニケーションのひとつになってきたということではないでしょうか?

反面、すべての情報というものは常に流通しているにもかかわらず
即座になんでも理解できると思う人たちが、
ネット上でも最適解を見つけることが出来ませんでした。渇望しておりました。(判例、法解釈など。)

今多くで行われている、物や情報を選択するという教育もちょっと違うかなと。
片面だけ与えられその中から選択するというのはもっと違う気がします。
発信者側が偏っているのも問題かなと思いまし、
自分の信じるところに従って、上達するそんな教育も
ネットを通じた形で必要なのかなと思います。

話がだいぶ飛んでしまいましたが、今回のことを契機として、
いろいろ学びたいと思って法学部系の通信講座を探しましたが、南山大学にはないようです。(^^;

この問題をネット上でも定期的にとりあげ、議論するのが
とりあえずの今の活動かなと思い返信いたします。

投稿: oto | 2004/06/12 18:49

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受信: 2004/06/05 18:13

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