ADR立法
ADR立法はいよいよ大詰めを迎えている。
司法制度改革本部のADR検討会のページによれば、5月24日の検討会でヒアリングを終え、31日に法案とりまとめに向けた議論の収斂がなされた模様である。
5月31日の議論はまだウェブにアップされていないが、少なくとも24日までの議論によれば、ADR立法は認証制度を導入し、認証されたADR機関が行うADRについては不調に終わって訴訟に移行すればADR申立時点で時効中断効が認められるということになりそうだ。
懸案のADRによる合意に執行力を付与するかどうかは消費者側から反対の声が強く、委員の間でも賛否が分かれている。
他方、ADRを経た紛争については、調停前置主義の適用がある場合でも、直接訴訟提起が可能となる方向が示されている。これは現在の調停前置の下でも結局話し合いの余地がなければ調停を省いて提起された訴えでも審理に入ることができるので、その裁量の中で認められるものだ。逆にいうと、ADRを経て提起された訴えについて、調停によることが必要と裁判官が判断したものは付調停ということになる。
現行法と変わらないように見えるが、原則例外関係が逆転するので、結構大きな変更となるように思われる。
それから、仲裁は認証制度の適用を受けないとか、認証されたからといって当然に弁護士法72条の適用除外となるわけではない反面、認証を受けないからといって当然に弁護士法72条による業務独占がADRに及ぶというものでもないといったあたり、曖昧な部分を残している。
ADR立法ができると、司法制度改革もいよいよほぼ終わりになる。検討会は、司法修習生の給費制度見直しがなお進行中のみである。
ただし、その他の課題では、消費者団体訴訟制度の立法が国生審の下で進行しているし、法制審議会の民訴改正も進行中であるので、まだ法改正ラッシュは終わったわけではない。
そして仲裁法のように、複製自由な英訳を立法サイドが作っていくことも重要な課題である。
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