更生手続開始前の給料・預り金・退職手当の請求権の取扱い
司法改革の中で変わった法律の一つに会社更生法がある。
景気が良くなり、あまり使われなくなるかもしれない頃になってようやく、というのが皮肉だが、それはともかく、不幸なことに最近身近な法律となっている。
その中でも、社内預金の取り扱いが変わったのにはやや驚いた。
従来は社内預金の全額が共益債権、つまり更生手続外で全額支払われる債権として保護されていたのだが、今回の改正では手続開始前6ヶ月間の給料に相当する額、または預かり金総額の3分の1に相当する額のいずれか多い額が共益債権となり、その残りは一般の更生債権としてカットの対象となるのだ。
給料30万円の人が、毎月5万円ずつこつこつと社内預金して総額300万円まで来たとしよう。上記の計算式によれば、総額の1/3より6ヶ月分の給料の方が多いので、180万円分が共益債権として保護され、残る120万円は一般債権者として扱われるのだ。場合によってはほとんどカットされるかもしれない。
この点、民事再生ではどうなっているかと、条文を読んでみたが、必ずしもはっきりしない。一般の先取特権のある会社使用人の雇用関係上の債権に該当する限りでは、優先債権となり、少なくとも株式会社・有限会社の従業員は期間制限なく優先債権となる。つまり共益債権には劣後するが、一般の再生債権とは別に随時弁済されるのだ。
上記の例でいうと、300万円は原則として丸々保護される。
国の公的年金制度がアテに出来そうもない今日、我々としてはせいぜい自己資金による老後を確保しなければならない。そのような現在、会社がつぶれたことで、解雇されるのはやむを得ないとしても、従業員の社内預金までもが部分的にカットされるというのは、なかなか納得がいかない。
せめて、そうした事実は広く周知して、社内預金が自分の過去6ヶ月分の給料総額を越えた場合は貸し倒れリスクがあることを、預金する前に知らしめておくべきである。
| 固定リンク
「法律・裁判」カテゴリの記事
- BOOK:弁論の世紀〜古代ギリシアのもう一つの戦場(2023.02.11)
- court:裁判官弾劾裁判の傍聴(2023.02.10)
- Book:平成司法制度改革の研究:理論なき改革はいかに挫折したのか(2023.02.02)
- Wikipediaの記事を裁判に証拠として提出することの効果(2023.01.08)
- 民訴125条と新たな法定訴訟担当(2023.01.04)
コメント