jugement:福岡小学校教諭の公務災害死について市の安全配慮義務違反が認められなかった事例
福岡地判令和7年1月14日(判決全文PDF)裁判例Watch
[事案]
福岡市立の小学校教諭Aが在職中にくも膜下出血で死亡し、以下のような事情から公務災害として認められた。
ア 亡Aの本件小学校での時間外勤務時間数は、本件疾病発症前1週間が32時間、同発症前30日間が73時間にとどまっており、当該時間外勤務時間数のみでは亡Aが過重で長時間に及ぶ時間外勤務(発症日から起算して1か月程度にわたる週当たり平均25時間程度以上の時間外勤務の連続)に従事していたとまでは認められない。
イ もっとも、亡Aが、①赴任初年度であるにもかかわらず、6年1組の担任に加え、学年主任及び生徒指導主任を任されたこと、②校長、教頭及び主幹から日常的に細かく業務をチェックされ、忙しいのに主幹から仕事を依頼され、校長の言動が精神的負荷となっていたこと、③責任感が強く、修学旅行の準備などの過重な業務を回避しなかった上、夏季休暇明け以降、妊娠した6年3組の女性教諭のサポートに加え、教育実習生の指導、PTA主催のバザーの準備等の行事が重なったこと、④自宅での持ち帰り作業時間について、本件疾病発症前30日間につき29時間程度あったと認められること等の負荷要因を前記アの時間外勤務時間数と総合的に評価すると、亡Aは本件小学校において通常の日常の職務に比較して特に過重な職務に従事していたものと認められる。
ウ 基金の委嘱した医師は、亡Aには飲酒や喫煙の習慣はなく、健康診断結果を見ても本件疾病を発症させる特段のリスクは見られない旨の医学的所見を示している。
Aの配偶者である原告が、市の安全配慮義務違反を理由とする損害賠償を請求したのに対して、福岡地裁は請求を棄却した。